著者
渡 修明 井上 博之 平田 八郎
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.511-517, 1993-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10

1.水産増養殖の重要魚介類11種に対する農薬の有機リン剤MEPとカーバメイト剤NACの急性毒性を流水式魚毒試験装置を用いた流水式試験法によって調べた。2.MEPの魚介類に対する急性毒性はクルマエビで極端に強く, ついで魚類のマダイ, ブリ, ボラで比較的強い応答であった。マハゼやアユでは中程度の毒性応答であり, ウナギは低い毒性であった。これに対して, アサリやアコヤガイは最も低い毒性であった。3.NACの魚介類に対する急性毒性はクルマエビで極めて強く, ついで魚類のブリおよびマハゼで比較的強い応答であった。マダイ, ヒラメ, クロダイ, ボラおよびアユでは中程度の毒性応答であり, ウナギは低い毒性であった。これに対して, アサリやアコヤガイは最も低い毒性であった。4.MEPおよびNACによる中毒症状は, クルマエビで刺激に対する反応過敏, 狂奔状態および自発性運動低下がみられ, 魚類では, これに加えて体色変化, 遊泳姿勢不安定, 鼻上げ症状, 刺激に対する反応鈍化, 痙攣, 脊椎骨変形が認められた。これらの症状の多くが神経毒性に特有なものであり, 中毒症状の観察によって薬剤の毒性の特徴や薬剤の推定ができるものと考えられた。