著者
伊牟田 直輝 中村 薫 平田 八郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学水産学部紀要 (ISSN:0453087X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.p61-67, 1994-12

To examine artificial pellets as a substitute for feed of the larval firefly Luciola picticollis, feeding experiments were conducted with commercial prawn pellets for 190 days. About 100 larvae just after hatching were accommodated into a 5l polyurethane stock tank provided with pebbles, aeration and filtration apparatus, and fed with living snails Semisulcospira libertina. Before beginning of feeding experiments, 20 individuals as the control and 10 individuals as the first experiment were sampled from the stock and transferred into each 1l tank provided with aeration and only a stone as a shelter. They were fed with the snail meat or pellets. After 60 days, two groups of 10 individuals were added to the feeding experiment as the second and third. Mean plus S.D. of the control body length was 17.7±6.5mm in 190 days. That of the first experiment was 4.6±0.7mm in 80 days. That of the second or third experiment was 10.3±3.4mm or 7.4±1.8mm each in 130 days. Means plus S.D. of the body weight at 2, 3, 4, 5, 6, and 7 instars of the control were 3.1±0.1mg, 6.9±0.1mg, 11.6±1.0mg, 44.7±1.4mg, 74.3±17.8mg, and 196.8±74.7mg. Those at 2, 3, 4, and 5 instars of the experimental group were 2.1±0.3mg, 4.2±0.8mg, 6.5±0.5mg, and 19.8±6.2mg. The pellets were able to maintain growth of firefly larvae, though they were not nutritionally excellent. From the binocular observation of larval feeding on pellets, maxillae were found to elongate and function in like manner of a drill.1)カワニナの代替にクルマエビ用の配合餌料を用い,ゲンジボタル幼虫の餌料飼育試験を行なった。 2)カワニナ餌区(対照区)を1つ,配合餌料区(実験区)を3つ設定し,190日間飼育実験した。実験期間中水温は,12°Cから27°Cの範囲で変化した。 3)平均体長±標準偏差は,対照区において190日目で17.7±6.5mm,実験1区は80日目で4.6±0.7mm,実験2区と実験3区は,各130日目で10.3±3.4mmと7.4±1.8mmであり,カワニナの方が配合餌料より早い伸びを示した。しかし生存率は逆に後者の方が良かった。 4)平均体重±標準偏差は各齢毎の測定で,対照区;2齢3.1±0.1mg,3齢6.9±0.1mg,4齢11.6±1.0mg,5齢44.7±1.4mg,6齢74.3±17.8mg,7齢196.8±74.7mg,実験区;2齢2.1±0.3mg,3齢4.2±0.8mg,4齢6.5±0.5mg,5齢19.8±6.2mg,となり齢数が加わるにつれて増加した。同時に体重の個体差も増加が示された。 5)配合餌料はカワニナ餌より成長効果が劣った。しかし,配合餌料でも摂餌は持続し成長も少なからず示されたこと,また生存率はカワニナ餌よりも良かったこと,等から本配合餌料は代用餌としての可能性を残す。 6)ゲンジボタル幼虫の摂餌行動上,従来不明であった小腮の役割に関して新知見を得た。
著者
許 波濤 平田 八郎
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.207-213, 1992-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
22

1) ヒラメ幼稚魚の生残, 成長, 飼育環境に及ぼすアナアオサ変異種のフィードバック効果を知るため, 供試魚とアオサの併用培養によるフィードバック投餌区 (A) , 無アオサ併用培養による無フィードバック区 (B) 及び毎日約85%ずつ自然海水と交換した海水交換区 (C) の3実験区を設定し, 22±1.0℃の恒温室で90日間にわたり飼育実験を行った。2) A・B・C区における実験によりは, ヒラメの生残率はそれぞれ92.9%, 14.3%および85.7%, 日間成長率はそれぞれ2.19%, 2.04%および2.17%, また, 飼料係数はそれぞれ0.95, 6.34および1.16であり, いずれもA区のほうがB・C区より優れた結果が得られた。3) A・B・C区における三態窒素およびPO4-Pの実験期間の平均濃度は, NH4-Nでそれぞれ4.4, 26.0および4.5, μg-at・l-1, NO2-Nでそれぞれ0.8, 8.5および1.1μg-at・l-1, NO3-Nでそれぞれ7.0, 35.3および5.8μg-at・l-1, またPO4-Pでそれぞれ3.8, 6.7および2.6μg-at・l-1であり, アオサの併用培養によるヒラメの飼育環境保全に効果が得られた。
著者
加藤 暁生 平田 八郎
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.75-80, 1990-04-15 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10
被引用文献数
1

1) ナマコ (アカナマコ) の活動日周性を調べるために, ナマコの底面縁周性を活用した移動記録装置を作成した。2) ナマコの活動速度は低温区 (12~17℃) で平均49.6±2.8m・d-1と活発であったが, 高温区 (18~25℃) では平均21.6±6.3m・d-1と不活発であった。なお, 最高活動速度は16℃区の52.3m・d-1であった。3) ナマコのリズムパターンは, 水温12~17℃では双峰型 (日中54%: 夜間46%) を, また, 水温18~25℃では単峰型 (昼間12%: 夜間88%) を示す傾向が伺えた。4) そのように異なるリズムパターンの発現は, 代謝量の増減に伴う摂餌時間帯の増減によるものと推察した。
著者
渡 修明 井上 博之 平田 八郎
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.511-517, 1993-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10

1.水産増養殖の重要魚介類11種に対する農薬の有機リン剤MEPとカーバメイト剤NACの急性毒性を流水式魚毒試験装置を用いた流水式試験法によって調べた。2.MEPの魚介類に対する急性毒性はクルマエビで極端に強く, ついで魚類のマダイ, ブリ, ボラで比較的強い応答であった。マハゼやアユでは中程度の毒性応答であり, ウナギは低い毒性であった。これに対して, アサリやアコヤガイは最も低い毒性であった。3.NACの魚介類に対する急性毒性はクルマエビで極めて強く, ついで魚類のブリおよびマハゼで比較的強い応答であった。マダイ, ヒラメ, クロダイ, ボラおよびアユでは中程度の毒性応答であり, ウナギは低い毒性であった。これに対して, アサリやアコヤガイは最も低い毒性であった。4.MEPおよびNACによる中毒症状は, クルマエビで刺激に対する反応過敏, 狂奔状態および自発性運動低下がみられ, 魚類では, これに加えて体色変化, 遊泳姿勢不安定, 鼻上げ症状, 刺激に対する反応鈍化, 痙攣, 脊椎骨変形が認められた。これらの症状の多くが神経毒性に特有なものであり, 中毒症状の観察によって薬剤の毒性の特徴や薬剤の推定ができるものと考えられた。
著者
石橋 泰典 小澤 勝 平田 八郎 熊井 英水
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.36-43, 2003-01-15
参考文献数
59
被引用文献数
8 13

マダイ仔稚魚に24時間の高水温,低水温,高塩分,低塩分およびアンモニアストレスをそれぞれ負荷し,半数致死レベルを求めて魚の発育に伴う各種環境ストレス耐性の変動様式を調べた。ストレス耐性は,どのストレスでもふ化直後は高く,ふ化後14から21日目の脊索屈曲期前後に有意に低下した。稚魚期(28日令)以降は,水温およびアンモニア耐性に明らかな回復がみられ,塩分耐性にも緩やかな回復が示された。以上の結果,マダイ仔稚魚のストレス耐性は,いずれも変態期に低下する様相を示し,この時期にみられる活動余地の低下が,各種環境ストレス耐性の低下原因の一つであることを示唆した。また,各種ストレスの24時間半数致死レベルが,ストレステストの負荷条件として利用できることを示唆した。