著者
渡 孝則
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では亜鉛結晶釉 (Willemite結晶 (Zn2SiO4)) において, 平成30年度の議論を基に磁器素地に穴をあけずに、シード材(ZnO+陶土)を表面に塗布する方法による結晶成長に成功した。結晶の成長温度が成長速度及び結晶形態に及ぼす影響を調べた。また、Mn発光結晶の形成について、シードより釉薬への添加が良いことが分かった。結晶成長温度を1050~1200℃まで50℃刻みで変化させ、結晶の大きさ及び形状を調べた。1100℃及び1150℃で最も大きく成長し(3時間で16mm)、前者では円盤状結晶と針状結晶が混在した組織、後者では針状組織となった。これは高温ほど結晶がガラスへ融解し易いためと考えられる。各保持温度で得られた結晶の配向性を調べた処、1050℃では粒状結晶からなっていたため配向性は認められなかったが、1100℃及び1150℃では(hk0)面の強い配向が認められた。これまではシード材である(ZnO+陶土)へのみMnOを添加していたが、この場合には発光強度が中央で最も強く、結晶周辺では殆ど認められなかった。そこで、今回の実験ではこれ以外にMnOを釉薬へ配合した実験も行った。254nmの紫外線照射下で、Willemite結晶自身も薄い緑色の発光を示した。ただし、装飾には利用できない。シード材に混合した場合には昨年と同様に結晶内で発光強度が低下した。一方、釉薬にMnOを乳鉢混合した場合には結晶が2~3mmしか成長せず、添加MnOが成長阻害材となっていることが分かった。なお、この結晶は緑色発行を示した。ただし、(釉薬+MnO粒子)混合物をボール見る粉砕・混合すると成長阻害効果は認められず、16mmの結晶が得られた。MnO添加量は0.3mol%が適切で、多くすると結晶成長阻害が認められた。この結晶は均一に強い緑色発光を示し、実用へ一歩近づいたと考えられる。