著者
渡辺 克昭
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ヒューマン・エンハンスメントとは、人間の肉体的、精神的限界を克服すべく技術を駆使し、個人の能力や素質を通常以上に高めたり更新したりすることを意味する。合衆国においてこの志向は顕著であるが、本研究は、現代アメリカ文学に表象されるそうした多様な言説と修辞を探求し、その情動を「幸福の追求」の政治学との関係において分析した。人間の自然への介入に対する抗しがたい衝動をめぐる学際的な広い視座を重視しつつ、本研究は、先端バイオ技術がもたらした欲望と不安の多層的なインターフェイスを緻密に探ることにより、パワーズやデリーロをはじめとする現代アメリカ作家が、独自の倫理的批評をいかに模索してきたかを明らかにした。
著者
渡辺 克昭
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

未来を常に既に先取りし、進歩を追求し続けてきたアメリカ的想像力が、その例外主義的なヴィジョンを根底から揺るがす惨劇といかに向き合ってきたか。このような視座から、アメリカ文化を特徴づける進歩のデザインと技術を唐突に打ち砕く死の表象を相関的に分析しようとする試みは従前なされていなかった。本研究は、20世紀アメリカの日常に浸透する進歩の言説と、度重なる惨事や破局によって前景化される死への眼差しがいかに交錯してきたか、そのダイナミズムを多様な表象分析を通して描出した。その結果、互いにフィードバックし合う両者の間には、互いにエネルギーを供給し、新たな関係を生成する界面が存在することが明らかになった。