著者
渡辺 恵司
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.41-53, 2013-03

精神障害者の精神科病院における社会的入院患者は、7 万人以上いると言われており、社会的入院者の解消は、早急に行われなければならない精神保健福祉の課題の1 つに挙げられている。京都府・京都市では、平成17 年度から精神科病院における社会的入院者の退院を促進するための事業を実施しており、平成22 年3 月末で50 名の方に地域移行推進員が関わりを持ち、29 名の方が退院に至っている。本研究は、平成17 〜 21 年度の地域移行支援事業(以下、事業)を利用し退院された方を対象とし、生活状況等の調査のほか、事業利用者の自由な意見も聴き、それらをまとめて考察を行った。特に事業利用者の意見として、退院して良かったことや、苦労していること、これからやってみたいことなど、入院生活では感じられない「ふつうの生活」の中で、「あたりまえの生活」を望んでいることが浮かび上がってきた。一人一人の生活における悩みや希望は様々であるが、退院し生活の中に「自由さ」という環境が生まれ、その自由さから生活の質の向上が得られていることがわかった。