著者
渡辺 深
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.20, no.9, pp.9_20-9_25, 2015-09-01 (Released:2016-01-08)
参考文献数
11

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著者
渡辺 深
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.2-16, 1991-06-30 (Released:2009-11-11)
参考文献数
37
被引用文献数
6 6

本研究の目的は、日本における労働者と職業のマッチング過程で構造変数が果たす役割を考察することである。グラノヴェターの弱い紐帯の仮説の検証を中心に、労働者のネットワークが年収、企業規模、職位、会社帰属意識、職務満足度などの転職結果に及ぼす影響を分析する。弱い紐帯の仮説とは、「転職者は、強い紐帯よりはむしろ弱い紐帯によって、多くの就職情報を得るだろう」、あるいは、「転職者は、強い紐帯よりはむしろ弱い紐帯によって、望ましい転職結果を得るだろう」という仮説である。東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県に在住の男性転職経験者を調査対象とし、弱い紐帯の仮説を検証した。回帰分析の結果より、前職の属性や労働者の基本的属性を統制しても、強い紐帯を通じて十分な就職情報に接近できること、また、強い紐帯が望ましい転職結果 (年収、会社帰属意識、職務満足度) をもたらすことが明らかになった。故に、本研究のサンプルでは弱い紐帯の仮説は支持されなかった。弱い紐帯の仮説とは逆に、日本では強い紐帯が転職において戦略的な機能を持っている。また、特定のネットワーク資源が特定の転職結果に対して特異的に影響を及ぼすことがわかった。また、紐帯の強さ、コンタクトの影響、仲介者の数などのネットワーク特性が情報収集度に影響を与え、情報収集度は会社帰属意識や職務満足度に作用することが観察された。この様に、情報がネットワーク資源と転職結果を結ぶ媒介変数であることが示唆される。最後に、日本における強い紐帯の使用に影響を与える文化的要因について考察する。