- 著者
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平川 善之
野原 英樹
北條 琢也
蓮尾 幸太
山崎 登志也
原 道也
花田 弘文
渡辺 誠士
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.C0331, 2005 (Released:2005-04-27)
【目的】反張膝はスポーツ障害・外傷に結びつくマルアライメントの一つである。臨床上、反張膝が原因と思われる半月板・靭帯損傷や、膝を徒手的に強制過伸展させることで再現できる膝蓋下や膝窩の疼痛を経験する。しかしこの疼痛を説明できる反張膝の過伸展域での運動動態を現したものはみられない。そこで今回健常者を対象に、膝過伸展角度を測定後、X線透視下にて膝伸展0°位(以下0°位)及び最大努力伸展位(以下HE位)の2条件の膝関節肢位で形態的特長を分析し、興味ある知見が得られたので報告する。【対象】下肢に疾患を有しない健常者19名(男性10名女性9名)36肢、平均年齢25.4±4.2歳である。【方法】a、膝過伸展角度の測定:被検者全員を立位にて、膝を最大過伸展させ、大転子・膝関節中央・外果を結んだ線を計測した。伸展角度15°以上を重度過伸展群(以下A群)、5°以上15°未満を中度過伸展群(以下B群)、5°以下を非過伸展群(以下C群)に分類した。b、X線透視:X線透視は全被験者に本研究の十分な説明を行い、同意を得た上で行った。東芝製透視装置(KXO-15C)を使用し、被験者は座位で矢状面より透視下にて大腿骨が真側面となるよう調節し、0°位とHE位の2肢位を3秒間静止させ録画した。録画した映像を画面上でトレースし以下の項目を測定した。脛骨関節面傾斜角(以下TJA):中点法により求めた大腿骨長軸と脛骨関節面のなす角とし、膝の前方で大腿骨側を計測した。脛骨前方変位量(以下TAD):大腿骨長軸と平行に大腿骨外・内顆と脛骨外・内顆に接する線を作図しその距離を測定し、大腿顆部最大前後径で除して標準化した。これらの形態的数値を基に0°位、HE位で、各群間を比較することにより、過伸展域での運動学的特性を分析した。統計処理は分散分析(有意水準5%未満)および多重比較(有意水準1%未満)を用いた。【結果】1:被検者の内訳はA群5名、B群6名、C群8名であり、平均膝過伸展角度は7.5°(±4.5°)であった。2:TJAは被験者の群間および膝関節肢位の両方の主効果が有意であった。HE位においてA群はC群よりも有意に大きかった。3:TADは群間の主効果に有意差はなかった。【考察】結果2、3より、0°位では膝過伸展角度の程度に関らず、各群間で形態的な特徴はみられないが、HE位ではA群はC群と比べ、脛骨前方変位に差はなく脛骨関節面の傾斜が大きくなることがわかった。このことはC群に比べてA群では、0°位から過伸展する際に、いわゆる「滑りと転がり運動」のうち、「滑り」に差はないが「転がり」が強いと考察された。これにより膝前方では脛骨関節前面と大腿骨関節面が衝突し、ここが支点となって後方では大腿・脛骨間距離が開大し、関節構成体の緊張の増大が起こることが推測される。このため強制過伸展により膝蓋下や膝後面に疼痛を生じさせる機序が考えられた。