- 著者
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渡辺 陽菜
井上 節子
- 出版者
- 文教大学湘南総合研究所
- 雑誌
- 湘南フォーラム (ISSN:18834752)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, pp.111-118, 2014-02
玄米には抗酸化作用を示すフィチン酸(IP6)が多く含まれているため、健康志向の一つとして、"玄米食"が注目されている。一方で、フィチン酸のリン酸基とミネラル元素が結合し、体外に排出されるため、玄米摂取によるミネラル阻害という問題が報告されている。そこで、玄米のミネラル阻害を抑制するために、フィチン酸に含まれるリン酸基の一部を脱リン酸し、摂取する方法の検討を行った。玄米を調味料として用いられる食塩水(塩化ナトリウム)で洗浄し、結合しているリン酸基の変化を調べた。さらに、フィチン酸含量が少ない精白米と、玄米の抗酸化力の違いを調べた。 米粉、玄米粉、発芽玄米粉のフィチン酸(IP6)とイノシトール5リン酸(IP5)量を、液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。IP6は玄米粉、発芽玄米粉に多く、IP5は玄米粉に多く含まれていたが、米粉では両成分が低値を示した。 また、玄米粉を塩化ナトリウム溶液(0.5 、1.0 、3.0 、5.0%濃度) で洗浄し、HPLC によって、水溶性抽出分と脂溶性抽出分に分け、各抽出分のIP6、IP5、イノシトール4リン酸(IP4)の定量を行った。IP6は脂溶性抽出に多く含まれ、IP5とIP4は水溶性抽出分に多く含まれていた。また、洗浄に使用した塩化ナトリウム濃度が大きくなると、IP6、IP5、IP4濃度が高くなった。米粉と玄米粉を同様に塩化ナトリウム溶液で洗浄し、その後、抗酸化力の指標である過酸化脂質生成量の変化をTBARS(八木)法で調べた。塩化ナトリウム濃度が高くなると、米粉では過酸化脂質量の増加がみられたが、玄米ではその増加が見られなかった。この事から、玄米粉は白米粉と比べ、過酸化脂質生成が抑制される事が明らかになった。