著者
渡邉 邦友
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.121-128, 2014 (Released:2014-07-31)
参考文献数
27

自閉症スペクトラム障害(Autistic Spectrum Disorders(ASD))とは,子供の社会的な発達,伝達能力の発達,想像力の発達などの一連の発達障害で,5つのサブグループがある.遺伝子の変異あるいは欠失が原因とされる一つのサブグループであるRett disorder以外のASDの原因は不明である.原因不明のサブグループの中に18ヶ月くらいまでは正常に発達していた子供が,その後典型的な症状を呈して後退していくRegressive autism(RA)がある.中耳炎などの感染症の治療に関連して発症することが多く,しかも消化器症状を伴うことが多いことから,抗菌薬による腸内細菌叢の変化が発症に何らかの重要な役割を演じているに違いないと考えられてきた.自閉症とClostridium tetaniと題するE. Bolteによる論文発表から進展した最近の20年間余のRA患者の腸内細菌叢,粘膜生検材料細菌叢に関する研究からAutismの発症あるいは病状の悪化に関連する可能性があるいわゆるAutism-associated bacteriaの存在が指摘されるに至っている.
著者
三鴨 廣繁 玉舎 輝彦 田中 香お里 渡邉 邦友
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.35-40, 2006-02-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
6
被引用文献数
2

近年では,性行動の多様化により,クラミジア・トラコマティスの咽頭感染を認める症例が増加していると言われている。しかし,クラミジア・トラコマティスは,咽頭に感染しても無症状のことも多く,感染が拡大する要因のひとつになっていると考えられる。今回,一般女性およびcommercial sex workers (CSWs) の性行動の実態およびクラミジア感染症 (子宮頸管および咽頭) の現状について調査した。その結果,一般女性においてもオーラルセックスは,性行為において,ごく普通の行為として定着していることが明らかになった。子宮頸管にクラミジア感染が認められた女性は,CSWsでは33.3%,一般女性では7.9%であり,咽頭にクラミジア感染が認められた女性は,CSWsでは22.5%,一般女性では5.2%であった。また,これらに対して,クラリスロマイシン,レボフロキサシン,アジスロマイシンによる治療成績を検討したところ,子宮頸管感染ではクラリスロマイシン400mgの7, 10, 14日間投与,レボフロキサシン300mgの7, 10, 14日間投与,アジスロマイシン1000mg単回投与のいずれにおいても除菌率は100%であった。しかし,咽頭感染では,クラリスロマイシン,レボフロキシンの10, 14日投与では,除菌率は100%であったが, 7日間投与では,それぞれ, 83.9%, 86.2%であり,またアジスロマイシンの単回投与では85.0%であった。これらの成績より,クラミジア咽頭感染ではクラリスロマイシンや,レボフロキサシンなどのフルオロキノロン系抗菌薬を10日間以上投与する必要があると考えられた。クラミジア咽頭感染の臨床的意義については議論の多いところであるが,今後は,耳鼻咽喉科および内科の医師とも協力しながら,培養法等などを用いた詳細な検討が必要であると考える。