著者
渡邊 郁夫 井汲 芳夫 大塚 紘雄
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.363-368, 2002-11-30
被引用文献数
1 1

産業廃棄物としての石炭灰を,未利用資源の有効活用の観点から,農業,緑化分野へ利用することを目的として,クリンカアッシュ(以下Cアッシュ)を用いた樹木による播種試験および苗木植栽試験を行った。樹木は,マテバシイ,アラカシ,ウバメガシ,シャリンバイ,トベラの5種,試験に供した用土は,対照区(赤玉土50%+ピートモス50%),試験区-1(Cアッシュ50%+ピートモス50%),試験区-2(Cアッシュ50%+赤玉土20%+ピートモス30%)の3区分である。播種試験では,樹種間にはバラツキが見られるものの,試験区-1<対照区<試験区-2の順に発芽率が高く,用土のpHの影響が考えられた。苗木植栽試験は,試験区間の成長率から,対照区<試験区-2<試験区-1の順に好生育を示し,特にD^2Lにおいてその傾向が強く現れた。また,Cアッシュ添加区では葉色の良化が認められ,微量要素の効果が示唆された。しかし,発芽に及ぼすpHの影響,一部のアラカシの葉に見られたホウ素過剰障害,土壌へのホウ素溶出の問題もあり,利用に際し,配合・施用量,化学組成および土壌中でのその動向について,更なる検討が必要である。