著者
鈴木 武志 坂 文彦 渡辺 郁夫 井汲 芳夫 藤嶽 暢英 大塚 紘雄
出版者
JAPANESE SOCIETY OF REVEGETATION TECHNOLOGY
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.325-331, 2009-11-30
被引用文献数
1

石炭灰の発生量が増加傾向にある現在,その有効利用が一層求められている。石炭灰のうちクリンカアッシュ(以下CA と称す)は,フライアッシュと比較して粒径が粗く飛散のおそれもないため,土壌の代替としての大量利用が期待されるが,利用に際してはホウ素過剰障害の可能性が示唆されている。本研究では,CA を主材料とする緑化基盤で緑化樹木のポット試験を行い,CA の緑化基盤としての有効性を検討した。緑化基盤材料には,CA,真砂土,ピートモス(以下PM と称す)を用い,CA 試験区(CA とPM を混合)をCA 95 %区,CA 90 %区,CA 80 %区の3 区,対照として真砂土にPM を10% 混合したものを設定し,樹木は,アラカシ,ウバメガシ,シャリンバイ,トベラ,マテバシイの5 種を用いて,約7 ケ月間のポット試験を行った。<BR>作製した緑化基盤の化学性,物理性は対照区と比較して有意な差はほとんど無かった。また,国内の法律に照らし合わせると,これらの材料の重金属類濃度は安全であった。緑化樹木の生育に関しては,5 樹種とも,樹高(H),幹直径(D)から表されるD<SUP>2</SUP>H の試験期間中の生長率および試験終了時の新鮮重に,試験区間で有意な差はみられなかった。また,CA 試験区の樹木葉中ホウ素含量は,シャリンバイ以外の4 樹種で対照区に対して高い傾向を示したが,生育障害は確認されず,他の金属類に関しても異常な値は認められなかった。これらのことから,本研究に用いたCA を緑化基盤として大量利用することは十分可能であると考えられるが,実際の利用の段階では,CA ごとの性質の違いを検討していく必要がある。
著者
大塚 紘雄 君和田 健二 上原 洋一
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.629-636, 1994-12-05
被引用文献数
6

桜島噴火から噴出した新鮮火山灰に腐植の給源と思われるススキ,ササ,カシワの植物遺体を添加し,反応速度を高めるために加湿して培養し,腐植酸の生成過程を追跡した.さらに,腐植酸の生成に関して反応速度論的解析を試みた.結果を要約すると次のとおりである. 1)培養による植物遺体の色の変化は,新鮮火山灰・水添加区(新鮮火山灰+植物遺体+水)では,培養日数が増加するにしたがい,黄色から褐色,黒褐色へと変化した.植物遺体区(植物遺体+水)も黄色から,赤黄色を経て黒褐色に変化するが,その速度は新鮮火山灰水添加区より著しく遅かった.新鮮火山灰・水無添加区(新鮮火山灰区+植物遺体)では黒褐色にはならなかった. 2)新鮮火山灰・水添加区の色は,90℃,75℃,65℃の順に早く黒褐色に変化した. 3)90℃培養ススキの腐植酸の形態変化は,新鮮火山区では202日間でA型に達したが,植物遺体区(ススキ+水)ではB型にとどまった.75℃についても,同様なパターンがみられた. 4)ササの腐植酸への形態変化のパターンもススキの場合に類似し,培養の初期にΔlog K の大きな現象が起こった後に,RFの増加が始まった.しかし,カシワではΔlog K の現象変化が小さく,培養の初期からRFの増加が起こった.しかし,カシワにおいても,ススキ,ササと同様に,新鮮火山灰・水添加区ではA型の生成が早かった. 5)75℃培養区の微生物測定の結果,微生物の影響はほとんどないと判断した.したがって,ススキ,ササ,カシワの各植物遺体の腐植酸はすべて,(1)新鮮火山灰と水が存在する無菌的条件下で,培養温度が高いほど早くA型腐植酸を生成できること,(2)水が存在しないと,腐植酸の腐植化の程度は進行しないこと,(3)新鮮火山灰は腐植化の程度を進行させることが明らかとなった. 6)反応速度論的解析によって,ススキの新鮮火山灰区,35℃では約150年でRF80以上のA型腐植酸になることを推定した.ススキを有機物の給源とする土壌では,植物遺体中のA型腐植酸の基質量と反応速度が十分に大きく,活性化エネルギーはササよりも小さい.ススキはA型腐植酸が容易に生成できる条件を備えていることが明らかとなった.
著者
渡邊 郁夫 井汲 芳夫 大塚 紘雄
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.363-368, 2002-11-30
被引用文献数
1 1

産業廃棄物としての石炭灰を,未利用資源の有効活用の観点から,農業,緑化分野へ利用することを目的として,クリンカアッシュ(以下Cアッシュ)を用いた樹木による播種試験および苗木植栽試験を行った。樹木は,マテバシイ,アラカシ,ウバメガシ,シャリンバイ,トベラの5種,試験に供した用土は,対照区(赤玉土50%+ピートモス50%),試験区-1(Cアッシュ50%+ピートモス50%),試験区-2(Cアッシュ50%+赤玉土20%+ピートモス30%)の3区分である。播種試験では,樹種間にはバラツキが見られるものの,試験区-1<対照区<試験区-2の順に発芽率が高く,用土のpHの影響が考えられた。苗木植栽試験は,試験区間の成長率から,対照区<試験区-2<試験区-1の順に好生育を示し,特にD^2Lにおいてその傾向が強く現れた。また,Cアッシュ添加区では葉色の良化が認められ,微量要素の効果が示唆された。しかし,発芽に及ぼすpHの影響,一部のアラカシの葉に見られたホウ素過剰障害,土壌へのホウ素溶出の問題もあり,利用に際し,配合・施用量,化学組成および土壌中でのその動向について,更なる検討が必要である。