著者
渡部 浩章
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.807-812, 2008-10-31
被引用文献数
1

2004年9月29日09時には台風第21号が九州南部にあった.三重県付近は台風本体の影響を直接は受けていないが,下層の暖湿気塊が流れ込みやすい状態であり,尾鷲では29日の朝から昼前を中心として豪雨となった.2kmおよび5kmの水平分解能の気象庁非静力学モデルを用いて,豪雨をもたらした降水システムが強化された要因を調べた.数値実験の結果は,紀伊山脈南東斜面における発達した降水システム,尾鷲付近における地上の一様な東風,高度1.5km付近の南東風をよく再現した.山岳の影響により海岸線付近から山岳東斜面で対流が活発であった状況の中で,東からの降水セルの合流とともに尾鷲付近で降水システムの組織化と発達がみられた.このとき,さらに厚さ約400mの下層冷気塊によって下層収束が強化された結果,この降水システムが急激に発達し,80mm/hをこえる激しい豪雨をもたらしたと考えられる.
著者
渡部 浩章
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.449-455, 2007-05-31
参考文献数
7
被引用文献数
2

福井豪雨をもたらした線状降水域について,1.5kmまたは5kmの分解能を持つ気象庁非静力学モデル(JMA-NHM)で詳しく調べた.福井県の西海上では,実況の解析雨量に対応する線状降水域をほぼ再現した.中層では梅雨前線に沿って高湿度領域となっており,前線付近での風向は一様に西北西であった.下層では前線に沿って前線南側の西風と前線北側の北西風により線状の収束域が持続していた,線状降水域の風上に次々と積乱雲(降水セル)が発生して,バックビルディング型の特徴を示した.降水セルは線状降水域に沿って時速約50km/hで東南東進していた.降水セル下部の収束と上部の発散は,ともに10^<-3>/s以上の大きさであった.また,雨滴の蒸発による冷却効果は見られなかった.