- 著者
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板倉 尚子
渡部 真由美
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.C0930, 2008 (Released:2008-05-13)
【目的】我々はA大学女子バレーボール部(以下AVT)において、誘因が明らかでない近位脛腓関節部の疼痛を数例経験している.疼痛の誘因を探していたところ、ウォーミングアップおよびクーリングダウンの際に日常的に行われている腓骨筋に対するエクササイズ方法(以下PEx)に誤操作を確認した.AVTが行っているPExは、2人組にて股関節・膝関節屈曲位および足関節背屈位とし、両下肢内側を密着し、踵部を床面に接地させて固定させ、パートナーが両足部外側に徒手抵抗を加え腓骨筋を等尺性収縮させたのち、急激に徒手抵抗を解除する方法で行われていた.抵抗を解除した瞬間に足関節外返し運動と著明な下腿外旋が生じているのを観察した.今回、誤操作によるPExが近位脛腓関節と下腿外旋に与える影響を測定した.【対象および方法】AVT所属選手18名36肢とした.方法1についてはB大学女子バレーボール部所属選手(以下BVT)で膝関節に外傷の既往のない選手8名16肢に同意を得て実施した.方法1は触診により近位脛腓関節部の圧痛を確認した.方法2は肢位を端座位とし股関節および膝関節、足関節は90度屈曲位とした.大腿骨内側上顆および外側上顆を結ぶ線の中間点と上前腸骨棘を通る線を大腿骨長軸とし、大腿骨長軸と交わる垂直線をラインAとした.ラインAと膝蓋骨下端を通る水平線との交点をマーキングし、交点と脛骨粗面部と結ぶ線をラインBとした.ラインAとラインBをなす角度を測定した.測定は中間位および他動的に下腿を最終域まで外旋する操作をさせた肢位で行った.【結果】方法1によりBVTでは全例において近位脛腓関節部に圧痛および違和感は認められなかったが、AVTでは36肢のうち11肢(30.6%)に認められた.方法2にて得られた測定値の平均は中間位18.2±7.9°、外旋位36.2±8.9°、外旋位と中間位の差の平均は18.1±7.3であった.測定値と圧痛出現の関係においては明らかな傾向は認められなかった.【考察】方法1ではBVTでは全例に圧痛を認めなかったが、AVTでは11肢(30.6%)に圧痛を確認した.足関節外返しにより腓骨頭は上方へ引き上げられ、また膝関節屈曲位での膝関節外旋運動は大腿二頭筋の筋活動が優位となり腓骨頭を後方へ牽引させる.BVTでは誤操作によるPExは行われておらず、方法1の結果から、誤操作によるPExの繰り返しは近位脛腓関節部に負荷をかけ疼痛の誘因となることが予想された.しかし下腿外旋と圧痛出現に関しては明らかな傾向は認められず、下腿外旋が大きいほど疼痛が出現するとは限らないことが示された.【まとめ】我々はAVTとBVTに対して外傷管理を行っているが、AVTにのみ誘因が明らかでない近位脛腓関節部の疼痛を経験していた.疼痛発生の誘因は日常的に行われていた誤操作によるPExである可能性があると思われた.今後は正しいPExを指導し経過観察する予定である.