- 著者
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馬場 卓也
肥満 智紀
梅枝 覚
山本 隆行
湯澤 浩之
中山 茂樹
- 出版者
- 日本臨床外科学会
- 雑誌
- 日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
- 巻号頁・発行日
- vol.76, no.3, pp.608-612, 2015 (Released:2015-10-01)
- 参考文献数
- 12
症例は65歳,女性.腹部膨満を主訴に来院.腹部CT・MRIで多量の腹水と下腹部に分葉状軟部腫瘍を認め,PET-CTで同部に高度集積を認めた.血清CA125は高値であった.腹水穿刺細胞診でadenocarcinomaと診断された.消化管・子宮・卵巣に異常を認めなかったため,原発不明癌として試験腹腔鏡を施行した.大網に一塊となった多房充実性腫瘍と腹膜播種を認めた.腫瘍は可及的に切除した.病理組織学的検査は漿液性乳頭状腺癌であった.以上より,腹膜原発漿液性乳頭状腺癌の診断で術後はpaclitaxel・carboplatin併用による化学療法を施行した.一時は奏効したが次第に腫瘍は増大し,腹水も貯留するようになっていった.腹水濾過濃縮再静注法(CART)を行うことで全身状態は保持しえたが,術後18カ月で死亡した.稀ではあるが原発不明癌では本症例も念頭に置き,診断・治療にあたるべきと考えられた.