著者
馬場 卓也 梅枝 覚 野地 みどり 山本 隆行 湯澤 浩之 中山 茂樹
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.813-816, 2015 (Released:2015-10-30)
参考文献数
11
被引用文献数
2

症例は46歳,女性.検診で上部消化管造影検査を施行した.翌日,腹痛を主訴に当院を受診された.腹部単純X線とCTにてS状結腸に多量のバリウム貯留像を認めた.明らかな腹水,free airなどの所見は認めなかった.緊急下部消化管内視鏡検査を施行,S状結腸まで到達するもバリウム塊は陥頓していた.腹痛が増強し腸管穿孔も懸念されたため緊急手術を行った.S状結腸でバリウム塊が露出していたため,これを摘出すると3cmの穿孔を認めた.Hartmann手術と腹腔内洗浄・ドレナージ術を施行した.術後ストマ近傍に感染性血腫を発症し経皮的ドレナージを要したが,DICなど大腸穿孔に見られる重篤な全身状態には至らなかった.大腸穿孔は憩室や腫瘍など既存の疾患が関与する場合が多く,バリウムにより穿孔する報告例は少ない.集団検診時の上部消化管造影検査におけるバリウムの停滞で大腸穿孔を発症した症例を経験したので報告する.
著者
梅枝 覚 松本 好市 北川 達士 野地 みどり 山本 隆行 石井 雅昭 成田 清 鳥井 孝宏 肥満 智紀 山崎 学
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.838-845, 2010 (Released:2010-10-15)
参考文献数
28
被引用文献数
1

環状自動縫合器(circuler stapler,PPH=procedure for prolapse and hemorrhoids)による痔核脱肛の手術は,1998年Longoによって発表された手術(粘膜環状切除術,以下PPH)であり,痔核口側の直腸粘膜を環状切除し,痔核脱肛を吊り上げ固定する術式で,疼痛が少なく,QOLにすぐれているため世界で広く行われるようになった.本邦でも2001年より各施設で施行され,術後疼痛の軽減,早期社会復帰,再発率において結紮切除術と比べても差がない,などとIII度内痔核には有用な手術術式と考えられる.一時期PPHによる合併症も報告されたが,PPH機種の改良,手技の向上により合併症が減少した.PPHの特性から,すべての痔核に適応はなく,適応基準を厳格にして症例を選択する必要がある.術者は他の治療法であるLEやALTAにも精通し,長所短所を理解のうえ,痔核・脱肛の適応を的確に判断出来る能力があり,PPHの特性と実技を充分会得したうえで行う手技である.適応症例においては非常に有用な手術と思われる.