著者
満 都拉 藤井 敦 石川 徹也
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.2733-2745, 2006-08-15

モンゴル語には,モンゴル文字を用いて表記する伝統的モンゴル語とキリル文字を用いて表記する現代モンゴル語の2 種類がある.伝統的モンゴル語は主に中国の内モンゴル自治区で使われており,現代モンゴル語は主にモンゴル国で使われている.両方のモンゴル語を読み書きができる人は少ないため,内モンゴル自治区とモンゴル国で情報の交換が困難である.しかし,2 つのモンゴル語は音声言語としてはほとんど同じであり,発音に基づいて文字単位の対応を付けることができる.そこで,本論文は伝統的モンゴル語と現代モンゴル語を双方向的に翻字する手法を提案する.具体的には,一方のモンゴル語で書かれたテキストを文字単位で他方のモンゴル語に変換する.また,正字法を適用し,文字単位では形式化が困難な表記上の違いに対処する.新聞記事を用いた評価実験の結果,現代モンゴル語から伝統的モンゴル語への翻字精度は80.6%,伝統的モンゴル語から現代モンゴル語への翻字精度は85.5%であった.また,本手法による自動翻字の結果に誤りが含まれてもテキストの内容理解には支障がなかった.