著者
辻村 和佑 溝下 雅子
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.49-62, 2003-06-25 (Released:2015-03-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

本稿では資金循環分析の枠組みをもとに,外貨準備の保有形態,さらには政府短期証券の発行と国庫余裕金繰替使用との相違にまで遡って,外国為替平衡操作の効果を分析した.その結果,邦銀国内店や外銀国内拠点への預託のように,外貨準備を国内で運用する場合には為替相場への影響が限定的であるのに対して,海外で発行された外貨建債券の買入や海外の中央銀行への預託のように,これを国外で運用する場合には比較的大きな介入効果が得られることを確認した.また外国為替平衡操作に対する日本銀行の対応を一般化すると,非不胎化,不胎化,逆非不胎化,逆不胎化と4分類することができる.本稿ではそれぞれの場合に対して,利用する金融市場調節手段ごとに海外への資金流出と海外からの資金流入の値を計測することで外国為替相場に与える影響を峻別した.この結果,不胎化もしくは非不胎化が外国為替平衡操作の効果を減殺するかどうかはひとえに金融調節手段の選択に依拠しており,これを一概に定性的に論ずることはできないことを確認した.