著者
溝口 巴奈 川田 紀美子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.153-164, 2019-12-27 (Released:2019-12-27)
参考文献数
23

目 的初めて親になった男性における,父親としての発達とパートナーの里帰りの有無および里帰りに関する各要因との関連について検討することを目的とした。対象と方法第1子出生後約1か月が経過した男性345名を対象に,7産科医療施設で無記名自記式質問紙調査を行った。質問項目は,父親になることによる発達尺度,主観的幸福感尺度,基本的属性,里帰りの形態,里帰り期間中の父親の生活実態である。里帰りの有無および里帰りに関する各要因と2つの尺度得点との関連について,Mann-Whitney U検定またはKruskal-Wallis検定を行った。結 果本研究対象者においては,パートナーの里帰りの有無によって,産後1か月での父親としての発達尺度得点に有意な差はみられなかった。里帰り群において,「父親になることによる発達尺度」と統計上有意な正の関連があった項目は,パートナーの里帰り期間中に,毎日電話をすること,里帰り後の育児をストレスに感じること,自分自身の家事をストレスに感じること,であった。また,有意な負の関連があった項目は,生まれた子どもとの心理的な距離を感じることであった。結 論里帰り期間中にパートナーと電話で毎日連絡を取ることで,父親の子どもを通しての視野の広がりにつながること,生まれた子どもとの心理的な距離を感じていた者は家族に対する愛情が低かったことが明らかになり,パートナーが里帰り期間中の男性に対して,母子への積極的なコミュニケーションを促す支援の重要性が示唆された。また,里帰り後の育児や里帰り期間中の家事をストレスに感じることは,父親としての役割を遂行しようと模索する,発達プロセスの初期段階にあたると考えられた。以上より,パートナーが里帰りをする男性に対しては,育児に関する知識の提供や育児家事行動について考える機会を与えることが重要であるという示唆を得た。