著者
溝口 想 黒川 純 佐久間 孝志 室井 聖史 小口 駿
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0371, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】肩関節疾患では腱板機能が重要視されており,腱板エクササイズの肢位や負荷量などについてさまざまな報告がなされている。我々は,腱板エクササイズの運動速度について検討し,運動速度の増加が棘下筋と三角筋の筋活動のバランスに影響を与えることを報告してきた。しかし,以前の報告は求心性収縮相のみの検討であり,遠心性収縮相の筋活動については検討していない。筋活動へ与える影響は運動速度だけでなく収縮様態によっても異なると考えられ,腱板エクササイズにおいても求心性収縮相と遠心性収縮相では運動速度の影響が異なることが予想される。本研究の目的は腱板エクササイズにおける棘下筋・三角筋の筋活動を求心性収縮相と遠心性収縮相で分け,運動速度が各筋活動に与える影響を検討することである。【方法】対象は肩関節に疾患のない健常者13名とした。測定肢位は端座位で肩関節45°屈曲位・肘関節90°屈曲位・前腕回外位で肘を机上に乗せた肢位とした。被験筋は棘下筋・三角筋中部・三角筋後部とした。運動課題は,セラバンドを把持させ,肩関節内旋60°から0°までの範囲の内外旋運動を9回とした。なお,運動速度はメトロノームを用い60回/分・120回/分・180回/分とした。解析区間は筋電図とビデオカメラを同期し外旋運動開始から内外旋0°までを求心性収縮相(CC相)とし,内外旋0°から内旋運動終了までを遠心性収縮相(EC相)とし,9回における前後2回を除いた中間5回の値を使用した。また,Danielsらの徒手筋力検査法に準じた肢位でMMT3遂行時の等尺性収縮を5秒間測定し中間3秒間の値から平均筋活動(RVC)を算出し,得られたデータより各筋の平均筋活動を正規化し,%RVCを算出した。検討項目は,棘下筋・三角筋中部・三角筋後部の筋活動の割合とし,各相別における運動速度間で比較した。統計学的処理はSPSS ver.12.0を使用し,棘下筋・三角筋中部・三角筋後部の筋活動の割合を一元配置分散分析を用いて検討した。その後の下位検定としてTuckyの多重比較を行った。なお,有意水準は5%とした。【結果】棘下筋はCC相・EC相ともに各運動速度で有意差を認めなかった。三角筋中部はCC相において各運動速度で有意差を認めなかった。EC相においては60回/分で6.2%,120回/分で8.6%,180回/分で10.4%であり,60回/分と比較し180回/分で有意に高値を示した。三角筋後部はCC相において60回/分で11.8%,120回/分で15.1%,180回/分で18.4%であり,60回/分と比較し180回/分で有意に高値を示した。EC相においては60回/分で9.5%,120回/分で11.1%,180回/分で13.8%であり,60回/分と比較し180回/分で有意に高値を示した。【結論】運動速度の増加によりCC相のみでなくEC相でも三角筋中部・後部の筋活動が増加し,棘下筋は一定の筋活動を示した。これより,運動速度の調節には棘下筋より三角筋中部・後部の影響が大きいと考えられた。