著者
溝口 誠一郎 笠原 義晃 堀 良彰 櫻井 幸一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1087-1098, 2013-03-15

ネットワーク上に存在するボットに感染した端末を特定するために,ネットワークアプリケーションが送信するアプリケーションプロトコルメッセージの送信間隔に着目したボット検知手法を提案する.人間がアプリケーションを操作した場合,そのアプリケーションプロトコルメッセージの送信間隔はばらつくのに対し,ボットの場合はその挙動がコードによって規定されているため,アプリケーションプロトコルメッセージの送信間隔の分布に偏りが起きる.この分布の違いを利用して,人間とそうでないものを区別することで,ボットを発見する.はじめにネットワークアプリケーションに対する入力と出力の関係をモデル化し,IRCクライアントのIRCメッセージ送信間隔のモデル化を行う.続いて,提案モデルに従ったボット検知アルゴリズムを設計する.アルゴリズムでは,IRCメッセージの送信間隔の列に対して階層型クラスタリングを適用することで人間と機械のモデルの区別を行う.評価では,モデルに基づく擬似データを用いてアルゴリズムのパラメータを設定した後,実際の人間が操作するIRCクライアントで観測されたIRCトラフィックならびにIRCボットのトラフィックに対して提案手法を適用した.その結果,IRCボットのトラフィックは機械が生成したトラフィックとして正しく判定された.