著者
滝川 桂子
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.143-151, 1995-04-01

本研究の目的は, 日本語と英語を媒体に言語と文化の関係を明確にし, 言語の特質及び翻訳の難しさと可能性を探ることにある.翻訳においては誤訳の危険性が宿命的に生じると言われているが, 多くの誤訳は異文化間に存在する概念の違いに起因している.言語間の概念の違いは, 言語成立に関わる社会構造・文化等が引き起こすと考えられ, 原語と翻訳語との間に意味のずれを引き起こし, 違和感を生じさせる.この違和感が誤訳として指摘されているのである.今回は, 日本語と英語の意味のずれをもたらす文化的単語を, 最も日本語的特徴をもった文学と言われる俳句のなかに見出だし, 日本語文化と英語文化の違いが英訳の違和感の原因であることを明確にし, 翻訳語(翻訳の目標言語)と原語(元の言語)との間にみられる違和感が, 翻訳語自体が母国語としての言語文化の影響を受けていることに原因があることを確かめた.言語の中で文化は常に言外の意味として存在し, 違和感や誤訳の危険性を予測させる.さらに, 翻訳語では表現出来ない原語表現は, 幾つかの方法で誤訳を避けることが出来るが, 翻訳者も翻訳語受容者(読み手)も原語の知識がなければ正確な理解が出来ないことが今回の考察によって裏付けられた.
著者
滝川 桂子 馬場 景子
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.87-91, 1999-03-31

本研究は, 先行研究からの流れを受けて, 文部省認定・工業英語検定試験(以下, 工業英検)から工業英語の専門性と英語教育との接点を見出す目的をもっている.さらに目的を包括するために, 高等教育機関におけるESP(English for Specific Purposes)教育の適応性を考察する.今回は, 四年制大学工学部に在籍する学生128名に工業英検4級と3級の試験問題を与え, その得点状況を比較分析した.結果, 4級及び3級の選択問題に関しては先行研究を裏付ける結果となったが, 3級の特徴である記述問題では被験者全体の得点率が極めて低調であり, 英語教育の見地から大きな課題を残す結果となった.つまり3級の記述問題では単に工業の知識だけでは克服できない, 英語の文章力の問題が大きく影響を与えていると考えられる.現段階ではtechnical termやjargonという語彙教育中心と思われているESP教育に次なる展開を見出すことが可能になってきた.