著者
滝沢 韶一
出版者
広島文化学園大学
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.1-8, 2002-03-25
被引用文献数
1

生後早期より特異の発達障害を呈す自閉症は1940年代前半期にアメリカおよびオーストリアにおいて相次いで報告された。それぞれ早期幼児自閉症(カナー)および自閉性精神病質(アスペルガー)と命名され,前者は小児精神分裂病との異同,後者は精神分裂病質との近縁性が議論され,その過程で当事者の家族(殊に母親)がスケープゴートの役割を担わされた。1960年代に入りイギリスのラター等によりその病態について認知障害の可能性が指摘されるにおよび,次第に治療教育的接近が可能となった。ほぼ同時期にアメリカのショプラー等により開発されたTreatment and Education of Autistic and Related Communication Handicapped Children (TEACCH) プログラムは現在国際的に最も高い評価を得ている。本邦においても20年前より同プログラムに対する関心は高まっているが,公教育における導入は未達成である。僅かに目覚めた教師達や施設職員による部分的実践が全国各地で行われている。さらに学校教育を終えた年長の自閉症者達(高機能を含む)への対応が焦眉の急である。そのためにも自閉症の病態についての正しい理解と福祉・教育的体制の確立が欠かせない。