著者
漆山 哲生
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.89-93, 2019-07-31 (Released:2019-08-27)
参考文献数
9

日本の気候は温暖で湿潤のため,麦類赤かび病が発生しやすく,穀粒が赤かび病菌が産生するデオキシニバレノール(DON)等のかび毒に汚染される.安全で高品質な食料の安定供給を担う農林水産省にとって,麦類のかび毒のリスク管理は重要な課題である.当省は,効果の高い農薬による適期防除,適期収穫,乾燥調製の徹底等を内容とする指針を作成し,生産段階における麦類のかび毒低減を進めている.国産麦類のかび毒実態調査から,赤かび病の発生により玄麦のDON濃度の著しい変動があることや,DON暴露による未就学児の健康リスクが無視できるほど小さくないことが示されている.気候変動の影響等により赤かび病の発生が増える可能性もあるため,継続的な調査と低減対策の一層の徹底が必要である.