著者
Eiji Tanaka
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.39-43, 2015-01-31 (Released:2015-04-22)
参考文献数
29

Rice false smut fungus (Villosiclava virens) causes smut-like disease on the panicles of rice plants. The disease development process after the booting stage has been revealed by artificial inoculation of the fungus. However, its life cycle and infection route in the field before the booting stage remain unclear. Here, these parameters are studied by referring to previous studies, morphological features of the fungus, and life cycles of phylogenetically related-fungi.
著者
國武 絵美 小林 哲夫
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.85-96, 2016-01-31 (Released:2016-02-16)
参考文献数
91

糸状菌は植物バイオマス(リグノセルロース)に由来する低分子の糖を細胞表層であるいは細胞内に取り込んだ後に感知し,シグナル伝達機構を介してセルラーゼやヘミセルラーゼ遺伝子の発現を転写レベルで活性化する.一方,資化しやすいグルコース等の糖の存在時にはカーボンカタボライト抑制機構が働き,転写が抑制される.このメカニズムを理解することは植物バイオマス分解酵素の効率的な生産に極めて重要である.主にAspergillus属,Trichoderma reesei,Neurospora crassaにおいてゲノムワイドな解析が行われ,遺伝子破壊株ライブラリの利用やセルラーゼ遺伝子と同時に制御される未知遺伝子の機能解析などにより,複数の転写制御因子が単離された.またその上流のシグナル伝達カスケードについても研究が進められており,セルロース性シグナルに対する応答が光や既存の調節経路により微調整されることなども示されている.このレビューではリグノセルロース分解酵素遺伝子の発現制御に関わる転写因子の機能,誘導物質の認識及びそのシグナルの伝達などの遺伝子発現誘導メカニズムに関する研究を概括した.
著者
亀井 克彦 落合 恵理
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.47-51, 2008 (Released:2008-04-01)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

屋内環境中には多種多様な真菌が生息している。これらの真菌の多くはマイコトキシンを産生するが、マイコトキシンとヒト疾患との関連性については未解明の点が多い。例外としては、近年、Aspergillus fumigatus によって産生されるグリオトキシンがアスペルギルス症の発症に関与していることが明らかにされた例がある。Stachybotrys chartarum は住環境内でも見受けられるほど広範に分布する真菌である。この真菌の吸入によって乳児特発性肺出血が惹起される可能性が報告されているが、その詳細は未だ明らかになってはいない。S. chartarum はトリコテセンのような種々の二次代謝産物を産生することから、我々は本菌の反復吸入がヒトの肺に何らかの影響を与えるものと考えた。S. chartarum を長期間吸入することによる影響を明らかにするために、我々は2週間に3回の頻度で本菌の胞子をマウスに経気管的に反復投与した。その結果、病理組織学的検討によってマウスで肺高血圧が惹起されることが明らかになった。これらのマウスでは肺動脈壁が肥厚し、内腔の狭窄や閉塞が生じていた。さらに、右室圧の上昇も確認された。トリコテセン産生の有無が異なるS. chartarum の株を用いた検討では、トリコテセン産生株を投与した場合で肺高血圧が惹起され、肺動脈病変の形成にはトリコテセンが関与する可能性が示唆された。このことについては今後更なる検討を行う必要がある。
著者
内海 宏之
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.59-64, 2011-07-31 (Released:2011-09-23)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

食品中のアフラトキシンについて,我が国では食品衛生法第6条第2号に基づき,アフラトキシンB1を指標として規制を行っているが,国際的には総アフラトキシン(アフラトキシンB1,B2,G1及びG2の合算)による規制が主流となっている.そこで,厚生労働科学研究費等による研究成果を踏まえ,食品安全委員会の食品健康影響評価及び薬事・食品衛生審議会の審議を経て,総アフラトキシンを指標とする規制(規制値は10μg/kg)に移行することとした.今後,総アフラトキシンを指標とした分析法を整備するとともに,輸入時検査における検体採取量の変更を行うこととしている.
著者
谷口 賢
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.127-131, 2012-07-31 (Released:2012-09-29)
参考文献数
5

平成23年8月16日付け食安発 0816第1号「総アフラトキシンの試験法について」において総アフラトキシンに対する試験法が通知された.この中で穀類,豆類および種実類については多機能カラム法を,香辛料や加工食品,その他多機能カラムでは精製が不十分な試料に対してはイムノアフィニティカラム法を適用できるとされている.しかし,当研究所および国立医薬品食品衛生研究所で検討した結果,イムノアフィニティカラム法において,通知文中「II.妥当性評価の方法」に示された真度を満たさない試料が存在することが判明した. そこで,種々の試料に対するイムノアフィニティカラム法の適用性およびその改良法を検討し,第70回学術講演会のワークショップで紹介した.本稿では,総アフラトキシンの試験法におけるイムノアフィニティカラム法の注意点およびこの検討結果について述べる.
著者
田端 節子
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.129-135, 2008 (Released:2008-10-07)
参考文献数
40
被引用文献数
4 4

一般に,国内では,一部の地域を除きアフラトキシン汚染が起きる可能性は低いと考えられているが,ペニシリウム属のカビが産生するパツリンやフザリウム属のカビが産生するデオキシニバレノール等は,我が国の気候条件でも産生される.近年,これらのカビ毒の国内での汚染が注目され,詳細な汚染実態の把握と,防御対策の開発が急務となっている.今回は,国内で起きているカビ毒汚染の状況と,リンゴ等のパツリン汚染について,その汚染の傾向から防御の対策について述べる.国内での自然汚染が確実に普遍的に起きているカビ毒は,麦中のデオキシニバレノールとニバレノールとリンゴ中のパツリンである.国内で汚染が起きている可能性が高いものに,麦中のゼアラレノン,ブドウ中のパツリン,黒糖中のアフラトキシンがある.また,穀類等のオクラトキシン汚染も国内で起きている可能性がある.国産リンゴを原料として使用するジュース製造工場から腐敗・傷害のため廃棄されたリンゴについてパツリン汚染調査を行った結果,一部に高濃度のパツリンの自然汚染が起きていることが判明し,低温保存でも保存期間が長くなるとパツリン汚染が進む傾向が認められた.リンゴのパツリン汚染を防止するには,汚染が起きている場所を特定し,菌の排除を行うこと,傷の付いたリンゴは長期間保存せず,早く加工してしまうことも効果的であると考えられる.
著者
加藤 直樹 徳岡 昌文 篠原 靖智 小山 泰二 長田 裕之
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.197-206, 2014-07-31 (Released:2014-10-15)
参考文献数
36
被引用文献数
1

麹菌Aspergillus oryzaeは我が国の伝統的な発酵食品の生産には欠かせない微生物であり,長い年月をかけた育種により,その安全性が確立されている.本菌はアフラトキシン生産菌A. flavusから派生した家畜種と考えられており,その進化的な近縁関係は両種のゲノム解読によっても裏付けられている.我々人類にとって対極とも言える両種の決定的な相違点として,二次代謝産物生産能を挙げることが出来る.両種のゲノム中には共通して多数の二次代謝系遺伝子が存在しているにも関わらず,A. oryzaeは一切,アフラトキシンを生産せず,報告のある二次代謝産物もごく少数である.生合成に関わる遺伝子の変異や欠損,転写抑制といった遺伝的要因の蓄積によるマイコトキシン生産能の喪失は,A. oryzaeがA. flavusから家畜化して生じた種であるという概念によく合致している.そういったA. oryzaeにおけるマイコトキシン生産を回避するための遺伝的要因「セーフガード」に焦点を当て,我々が最近明らかにしたシクロピアゾン酸(CPA)生産に対するセーフガードを中心に解説する.小胞体Ca2+-ATPaseに対する強力な阻害物質であるCPAはA. oryzaeの一部の菌株における生産が報告されている.その生合成遺伝子クラスターには,A. flavusでは欠失している遺伝子が含まれている.一見すると従来の家畜化の概念とは相反する現象ではあるが,種々の解析の結果,その遺伝子はCPAを2-オキソCPAに変換することで毒性を和らげる役割を担っていることが明らかとなった.麹菌ゲノム中には,その安全性を担保するための様々な遺伝要因が蓄積していることが改めて示唆された.
著者
作田 庄平
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.217-224, 2013-07-31 (Released:2013-12-10)
参考文献数
30

アフラトキシン汚染防除に有効な抗カビ剤は無く,これまで効果的なアフラトキシン汚染防除法は存在しなかった.しかし最近,アフラトキシン非生産株を圃場に施用し,生産株と拮抗させることでアフラトキシン汚染を防除するバイオコントロールの手法が実用化された.また,アフラトキシン生産阻害物質を生産する細菌を用いる手法の有用性も示されている.本稿では,バイオコントロールによるアフラトキシン汚染防除の有用性と問題点について概説する.
著者
一色 賢司
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.29-32, 2017

<p> 人間は従属栄養生物であり,ご先祖から食べ物で多くの苦労をしてきた.食品安全は,国,民族,地域でとらえ方や定義が異なる.食品安全分野でも,地理的条件,食文化が違うのに否応なしに国際標準化は進行している.食料自給率が低い我が国は,食品のリスク分析だけではなく,農場から食卓までのフードチェーン・アプローチを重視すべきである.消費生活においても,川上と川下の協力がなければ安定的な調達は困難である.我が国のフードチェーンは,地球全体に伸びていることを国民に説明し,理解を得なければならない.気候変動や天災,さらにテロなどの不測の事態にも備えるべきである.</p>
著者
中村 伸
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.101-104, 2000-07-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
16

スギ花粉症などの即時型アレルギー反応は,抗原(スギ花粉症では,スギ花粉中に含まれる塩基性蛋白質のCryj.IならびにCryj.IIが抗原となる)に対する特異的IgE抗体の産生が原因となる免疫異常で,近年こうしたアレルギー疾患が急増し,全人口の約20%が何らかのアレルギー症に悩まされている.アレルギー疾患は,欧米や日本等の"先進国"で多い事から"文明病"的位置づけにあるが,野生動物のサル類でもスギ花粉症が見られる.我々は準野性状態で飼育されているニホンザルの中に,ヒトと同様なスギ花粉症を見い出し,それを契機にサルモデル系でのIgE産生応答やアレルギー反応に関する研究を進めている.その過程で,ヒトの場合,過去数十年間の衛生環境の変化(原虫や寄生虫感染の低下など)が細胞性免疫応答(Th1)/液性免疫応答(Th2)のインバランス(Th2亢進)を惹起し,抗原特異的IgE抗体の産生亢進→花粉症・アレルギー疾患の増大要因となっていることを明らかにした.
著者
後藤 哲久
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.57-62, 2016-01-31 (Released:2016-02-16)
参考文献数
18

Aspergillus section Flavi にはアフラトキシン産生菌,非産生菌が含まれていることが知られている.しかし,アフラトキシン産生菌と,非産生菌あるいは分類的には産生菌でありながら産生能を持たない(失った)菌との関係,あるいはカビは何故アフラトキシンを産生するのか,という疑問にはまだ明確な答えは見つかっていない.
著者
Haruhisa Suga
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.121-130, 2015-07-31 (Released:2015-09-01)
参考文献数
49

Fumonisin, a mycotoxin produced by some members of Fusarium fujikuroi species complex, causes swine pulmonary edema and equine leukoencephalomalacia. Clustering of the genes involving fumonisin biosynthesis in the genome have been revealed. The FUM cluster poses many questions in regard to the process obtained by Fusarium and its evolution. In this mini review, fumonisin characteristics are described and the role of fumonisin for the producing fungi and the evolution of the FUM cluster were discussed.
著者
横田 栄一
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.119-123, 2004 (Released:2008-07-01)
参考文献数
13

近年,食品の国際規格策定の場であるFAO/WHO 合同食品規格委員会(コーデックス委員会)において,マイコトキシンに関する議論が活発化しており,コーデックス規格が順次設定されてきている.また,平成13 年2 月にはFAO/WHO 合同食品添加物専門家会議(JECFA)において多種にわたるマイコトキシンのリスク評価が行われており,今後,国際的な基準策定に向けた取り組みが進むものと思われる.この様な状況の中,我が国においても小麦のデオキシニバレノール及びりんごジュース中のパツリンについて規制を行ったところである.今後も健康被害を未然に防止するために,我が国における各種マイコトキシンの実態調査を行い,その結果等を踏まえて規格基準を整備していくことが重要と考えられる.
著者
熊谷 進
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.15-21, 2008 (Released:2008-04-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

エルゴティズム、ATA症(alimentary toxic aleukemia)、七面鳥X病以外にも多数の人や動物の疾病が、かび毒を原因としたものであることが提唱されてきた。その例として、中国等におけるアフラトキシンによる人の肝臓がん、インドやケニヤで発生した人や動物の急性アフラトキシン中毒症、南アフリカ等におけるフモニシンによるウマの白質脳軟化症や人の食道がん、バルカン地方におけるオクラトキシンによる人の腎症などが挙げられる。最近では人の神経管欠損へのフモニシンの関与が提唱されている。しかし、こうした教科書的に語られるかび毒に起因する疾病は、必ずしも疫学的あるいは毒性学的証拠に十分に裏付けられているわけではなく、広く受け入れられているかび毒の毒性機序にも未解決の問題が残っているように考えられる。その例として、アフラトキシンの化学構造と急性毒性との関連、腎症と尿路系腫瘍におけるオクラトキシンAの関与、動物種によるフモニシン毒性の顕著な差異などが挙げられるであろう。
著者
北川 章 細江 智夫 河合 賢一 北川 弘之 河合 清
出版者
日本マイコトキシン学会
巻号頁・発行日
no.2, pp.65-69, 2019 (Released:2019-12-03)

Eupenicillium sheariiから分離された新規のマクロライド系抗生物質であるeusherilideの抗真菌性活性に関する分子機序を明らかにする目的で,新鮮な単離ラット肝ミトコンドリアを用いてミトコンドリアの呼吸機能について検討した。Eusherilideは,L-グルタミン酸系とコハク酸酸化系呼吸の両方を阻害した。この阻害は,ロテノンとアンチマイシンAの阻害部位の上に電子伝達シャントを生成するN,N,N',N'-テトラメチル-p-フェニレンジアミン(TMPD)およびシトクロムcオキシダーゼのための人工基質であるアスコルビン酸によって回復されなかった。シトクロムの酸化還元スペクトルにおいて,シトクロムa,b,cの全てがeushearilide存在下で還元型を保っていた。このことから,eushearilideが電子伝達系のシトクロムcオキシダーゼ(complex IV)を阻害することが示唆された。EusherilideはKCl等張溶液の中で懸濁されたミトコンドリアの膨化を誘導した。このミトコンドリア膨化の誘導は,内膜で透過性孔の生成を示すシクロスポリンAによって阻止された。これらの結果から,eushearilideがミトコンドリアの電子伝達系のcomplex IV部位(シトクロムcオキシダーゼ)の阻害により呼吸機能を減弱させ,ミトコンドリアを膨化させることが示唆された。
著者
横田 栄一
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.119-123, 2004-07-31
参考文献数
18

近年,食品の国際規格策定の場であるFAO/WHO 合同食品規格委員会(コーデックス委員会)において,マイコトキシンに関する議論が活発化しており,コーデックス規格が順次設定されてきている.また,平成13 年2 月にはFAO/WHO 合同食品添加物専門家会議(JECFA)において多種にわたるマイコトキシンのリスク評価が行われており,今後,国際的な基準策定に向けた取り組みが進むものと思われる.この様な状況の中,我が国においても小麦のデオキシニバレノール及びりんごジュース中のパツリンについて規制を行ったところである.今後も健康被害を未然に防止するために,我が国における各種マイコトキシンの実態調査を行い,その結果等を踏まえて規格基準を整備していくことが重要と考えられる.
著者
八木 正博
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.69-74, 2002 (Released:2009-01-08)
参考文献数
12

化学物質過敏症やシックハウス症候群といった室内空気中の化学物質による健康被害について社会的関心が高まっており,厚生労働省の⌈シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会⌉は既にホルムアルデヒド,トルエン,キシレンなど12物質の室内濃度指針値案及び暫定指針値案を策定し,総揮発性有機化合物(TVOC)の暫定目標値を定めた1).個別の指針値案はリスク評価に基づいた値であり,その濃度以下であれば通常の場合はその化学物質は健康への悪影響を及ぼさないと推定された値である.上記検討会は今後も引き続き他の化学物質の指針値案を策定していく予定である.しかし,実際の室内空気には複数の化学物質が存在すること,リスク評価を行うためのデータが不足していること及び指針値を決めていない化学物質による汚染の進行を未然に防ぐ目的からTVOCの暫定目標値も定められた1).ところで,最近の室内空気問題というのは新建材の開発や建築技術の発展などに伴い,種々の化学物質が用いられ,それらが室内空気中に揮散され,さらに住居の気密化が進んだことにより室内空気中の有機化学物質濃度が高まったために問題が生じてきたと考えられている.家具や電気製品などの家庭用品についても種々の化学物質が用いられており,これらも有機化学物質の発生源になっていると推定されている.今回,室内空気中化学物質の濃度指針値案が策定されたことにより,建築物や家庭用品等の関係者が室内空気中化学物質の濃度を下げる工夫をすることが期待され,今まで原因がわからず,健康被害があった人々の多くが健康を取り戻すことができると思われる.さらに調査研究が進み,有害な化学物質の発生の少ない,地域の風土に適した21世紀型住居が建てられ,その住居に適した住み方が検証されることにより,室内空気中化学物質による健康被害で悩む人が減ることが期待される.
著者
安田 正昭
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.67-72, 2013-01-31 (Released:2013-04-25)
参考文献数
11
被引用文献数
2

豆腐ようは沖縄以外の我が国ではほとんど見られないユニークな豆腐の発酵食品である.この食品は琉球王朝時代の 18世紀頃に中国から渡来した紅腐乳を琉球王府のお料理座で改良して造り出されたものと考えられる.発酵にかかわる主な微生物は, Monascus 属カビと Aspergillus oryzae である.豆腐ようの主要な構成成分は大豆タンパク質グリシニンの塩基性サブユニットおよびその他のポリペプチド(分子量 10,500-15,000)である.それら成分が豆腐ようのテクスチャーに関係している.発酵過程で大豆タンパク質はプロテアーゼの作用により低分子化され,一部はアミノ酸やペプチドに変換される.遊離アミノ酸は呈味にかかわる.発酵で生成したペプチド(IFL, WL)は血圧上昇抑制にかわわるアンギオテンシンⅠ変換酵素の阻害効果を示した.両ペプチドは消化酵素による連続処理後においても高い ACE 阻害活性を有していた.高血圧自然発症ラットを用いた動物実験においても豆腐よう投与群はコントロール群に比べて有意に血圧が低下した.豆腐ようには血圧上昇抑制効果のあることが期待された.
著者
玉那覇 康二
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.55-65, 2013-01-31 (Released:2013-04-25)
参考文献数
21

沖縄県は,日本列島の南に位置しており亜熱帯気候による自然毒食中毒は,気候や自然環境が反映されており,全国と異なっている. 沖縄県で発生している2001年から2010年までの 10年間の食中毒事例を見ると,自然毒食中毒の年平均は24%であり,更に自然毒食中毒のうち,動物性自然毒食中毒が91%と大半を占めている. 動物性自然毒のほとんどがサンゴ礁に生息する魚介類によるシガテラ食中毒である.シガテラ以外にも,ウリ科植物によるククルビタシン中毒,熱帯性キノコであるオオシロカラカサタケや麻薬成分を含有する幻覚性キノコによる食中毒も発生しており,これらについても事例を紹介する.
著者
漆山 哲生
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.89-93, 2019-07-31 (Released:2019-08-27)
参考文献数
9

日本の気候は温暖で湿潤のため,麦類赤かび病が発生しやすく,穀粒が赤かび病菌が産生するデオキシニバレノール(DON)等のかび毒に汚染される.安全で高品質な食料の安定供給を担う農林水産省にとって,麦類のかび毒のリスク管理は重要な課題である.当省は,効果の高い農薬による適期防除,適期収穫,乾燥調製の徹底等を内容とする指針を作成し,生産段階における麦類のかび毒低減を進めている.国産麦類のかび毒実態調査から,赤かび病の発生により玄麦のDON濃度の著しい変動があることや,DON暴露による未就学児の健康リスクが無視できるほど小さくないことが示されている.気候変動の影響等により赤かび病の発生が増える可能性もあるため,継続的な調査と低減対策の一層の徹底が必要である.