著者
小池 淳司 漆谷 敏和 樋野 誠一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_13-I_19, 2012 (Released:2013-03-12)
参考文献数
21

公共事業の投資効果に関する議論は,かつて,IS-LM曲線を用いた分析が主流であり,そこでは,公共投資が民間投資をクラウディング・アウトさせるか否かに強い関心がもたれていた.この議論での著者らの既存研究の結論は,デフレ不況のように経済が流動性の罠に陥っている場合は,クラウディング・アウトは発生しないというものである.一方で,このIS-LM曲線を用いた分析では,将来の期待を十分に反映していないという批判,いわゆるルーカス批判に十分に答えられない.しかし,近年の動学的確率的一般均衡(Dynamic Stochastic General Equilibrium:DSGE)モデルの発展によって,この問題についての議論ができるようになった.そこで本研究では,2000年以降のデータをもとに,MCMC法によるベイズ推定によってディープ・パラメーターを求め,DSGEモデルを用いて経済がデフレーションであり,かつ流動性の罠の状態にある日本における公共投資,いわゆる,財政政策の効果を明らかにする.