著者
藤井 聡 宮川 愛由
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_97-I_109, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
29
被引用文献数
2

自然災害に見舞われるリスクが高い我が国において,社会資本整備のみならず,防災及び経済発展の担い手として,土木建設業が非常に重要な役割を果たしてきた.一方で近年,公共工事の入札市場では,闇雲な低入札等の弊害により,建設業界全体が疲弊しており社会全体が甚大な不利益を被ることが危惧されている.そこで本研究では,我が国の公共調達制度適正化に資する知見を得ることを目的として,明治初期から今日に至るまでの我が国の公共調達の歴史変遷を整理した.その結果,我が国の公共調達は純粋な競争を避け,実質的に受発注者で調整を行うことで個々の受注価格と請負者を特定し,その中で,適切な工事品質を確保するという公益に資する目的で行われていた談合の存在と,それを正式に活用するための制度発展という歴史的経緯の存在が示唆された.
著者
樋野 誠一 門間 俊幸 小池 淳司 中野 剛志 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_21-I_32, 2012 (Released:2013-03-12)
参考文献数
6
被引用文献数
6

本研究は,デフレ時に実施する公共投資の効果は,通常(インフレ)時の効果と比較してどの程度異なるのか,あるいは,現下のデフレ不況から脱却するために必要な財政出動の規模と期間はどの程度かについて,公共投資のクラウディングアウトの有無に着目して,ケインズモデルにより検証する.特に,東日本大震災復興投資,新東名高速道路投資などさまざまな政策シナリオに基づき,公共投資の投資効果を実証的に分析することに主眼を置く.結論は,デフレ時においてはクラウディングアウトが生じないため通常時よりも乗数効果が約0.2ポイント高いことが示された.さらに,デフレ脱却のための公共投資の投資規模は,今の経済状況が続くと仮定すると,90年代の公共投資の持続的実施が必要となることが明らかとなった.
著者
草柳 俊二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.I_157-I_168, 2015 (Released:2016-03-31)
参考文献数
11
被引用文献数
1 3

設計施工契約は施工性を十分反映した設計を行うことにより,品質,時間,コストの効率向上を目指すものである.この契約形態は建設企業が従来の枠組みを超え,事業遂行力を向上させるといった面でも極めて重要な意味を持ち,先進諸国だけでなく,中進国の建設産業もその対応能力を急速に向上させている.我が国でもこの契約形態の導入が始まったが,受注者側のリスク拡大といった問題が顕在化している.リスクの均衡は適正な契約形態によって作られる.我が国では発注方式で制度作りを進めるため契約形態の議論が希薄となる.このため,リスクバランスという建設プロジェクトにおいて最も重要な議論が放置されてしまう傾向となる.設計施工契約形態の普及には,契約形態としての議論を深めシステムを作って行くことが必要となる.
著者
鎌谷 崇史 中尾 聡史 片山 慎太朗 東 徹 戸田 祐嗣 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_192-I_201, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
19

我が国では,自然災害に見舞われるリスクが高く,自然現象がもたらす被害を如何に抑制するかが問われてきた.自然災害の中でも,南海トラフ巨大地震や首都直下型地震による被害については,近年,様々に予測されているが,その一方で,大規模洪水がもたらす被害,特に経済被害については,定量的な予測が十分になされていない状況である.そこで,本研究では,SCGEモデル(空間的応用一般均衡モデル)を用いた大規模洪水による経済被害の推計手法を考案し,東京・大阪・東海の3つの地域における洪水シナリオに基づいて経済被害の推計を行うことを目的とした.
著者
中前 茂之 高野 伸栄 大川戸 貴浩
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.I_39-I_52, 2014 (Released:2015-02-28)
参考文献数
19
被引用文献数
1

平成に入ってから長く続いた少雪傾向が一変し,近年は豪雪が頻出する傾向がみられ,財政の厳しい市町村にとっては豪雪への対応は財政上軽い負担ではない.除雪事業の特徴として,あらかじめ降雪の量を決定して予算を立てることが不可能である上,一旦豪雪が発生した場合は市町村は除雪費を否応なく確保しなければならず,限られた市町村財政では賄いきれない恐れがある.しかしながら,国によるいくつかの支援措置はあるものの,国と地方の負担・分担のルールも明確に定まっていない.そこで,本稿では,これまでは直轄国道や道府県管理道路について除雪費推計手法として提案してきた除雪単価逓減則を市町村道にも適用することを検討するとともに,市町村の豪雪時における財源確保の状況や想定する負担限度を明らかにし,その際の課題を整理検討する.
著者
門間 俊幸 樋野 誠一 小池 淳司 中野 剛志 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.I_327-I_338, 2011 (Released:2012-03-30)
参考文献数
20
被引用文献数
2

公共事業関係費の適正規模を検討するには,公共投資額とその効果についての適切な把握は重要な判断材料となる.現在,財政支出を行うための財源調達については,税金,利用者負担だけでなく,政府の公債発行が行われることが多い.公債発行は金融市場の需給に影響することから,経済状況がインフレ期なのかデフレ期なのかによって,公共投資効果も大きく異なることが予想される.本稿では,現在のマクロ経済状況を最新のデータに基づき分析・整理した上で,道路投資額及び道路整備量から国内総生産の変化等を推計するマクロ計量経済モデルを構築する.その際にインフレやデフレの時の需給バランス及びこれに伴う価格調整メカニズムを考慮することにより,現下の経済情勢等を踏まえた従来のマクロ計量経済モデルの課題点の検証を行った.その結果,現在の経済状況は流動性の罠に陥っているデフレ状態の可能性があること,デフレ時には国債発行によるクラウディング・アウトが生じ難いこと,公共投資の効果がインフレ時に比べ効果が大きく表れる傾向があることが示された.
著者
小池 淳司 漆谷 敏和 樋野 誠一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_13-I_19, 2012 (Released:2013-03-12)
参考文献数
21

公共事業の投資効果に関する議論は,かつて,IS-LM曲線を用いた分析が主流であり,そこでは,公共投資が民間投資をクラウディング・アウトさせるか否かに強い関心がもたれていた.この議論での著者らの既存研究の結論は,デフレ不況のように経済が流動性の罠に陥っている場合は,クラウディング・アウトは発生しないというものである.一方で,このIS-LM曲線を用いた分析では,将来の期待を十分に反映していないという批判,いわゆるルーカス批判に十分に答えられない.しかし,近年の動学的確率的一般均衡(Dynamic Stochastic General Equilibrium:DSGE)モデルの発展によって,この問題についての議論ができるようになった.そこで本研究では,2000年以降のデータをもとに,MCMC法によるベイズ推定によってディープ・パラメーターを求め,DSGEモデルを用いて経済がデフレーションであり,かつ流動性の罠の状態にある日本における公共投資,いわゆる,財政政策の効果を明らかにする.
著者
梶谷 義雄 山本 広祐 豊田 康嗣 中島 正人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1-13, 2011 (Released:2011-01-20)
参考文献数
55

本研究では,水力発電施設の災害や事故による社会的影響を対象に,その分析手法や分析結果の効果的な活用方法について検討する.まず,過去の水力発電施設の被害事例の調査や分析を通じて,将来的に懸念される社会的影響発生のシナリオを構築する.次いで,過去事例にも散見される水力発電施設からの溢水が発生するシナリオを対象に,その定量的な分析手法について検討を行う.最後に,事例分析として,仮想的な水力発電施設や地域の人口・経済データを対象に,導水路損壊による社会的影響評価を実施し,被害額や発電による便益の観点から,災害対策優先度などの水力発電施設の維持管理戦略への反映可能性について考察した結果を報告する.
著者
藤井 聡 中野 剛志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.I_213-I_222, 2011 (Released:2012-03-30)
参考文献数
21

本稿では,国(政府)の公共事業の財源についての政治的判断を支援することを企図して,マクロ経済動向に及ぼす影響を加味しつつ,公共事業関係費の「水準」と「調達方法」を毎年どのように「調整」していくべきかの基本的な考え方を整理することを試みた.そして,市場における需要が供給を上回っているインフレ状況にある時には,インフレ緩和のために緊縮財政を基本とすることが得策であり,公共事業においては,公債ではなく,必要に応じた増税の可能性も視野に収めながら税収によって財源を調達することが得策であることを指摘した.一方で,逆にデフレ状況にある時には,デフレを緩和するための積極財政を基本とすることが必要であり,そのための財源については,定常的な税収に加えて公債を自国通貨建ての内債として発行することが得策であることを指摘した.
著者
松坂 敏博 森山 陽一 小笹 浩司 太田 秀樹 藤野 陽三 宮川 豊章 西村 和夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.1-18, 2017 (Released:2017-01-20)
参考文献数
25
被引用文献数
1 7

我が国の社会や経済活動を支える重要な社会インフラとなっている高速道路は,名神高速道路の開通から既に50年以上が経過したように,経過年数の長いものが増えてきている.高速道路の構造物は,過酷な使用状況に曝されており,長期的に健全な状態で機能させることが重要な課題となっている.本稿では,東,中,西日本高速道路会社3社が管理している高速道路の構造物の2011年度末時点での健全度データと点検調査データなどを用い,さまざまな角度から変状の要因を分析するとともに,これらのデータを用いて経年劣化の見通しを予測した.そのうえで,高速道路を長期的に健全な状態で機能させるために必要な,これらの構造物の大規模な更新や修繕の計画と課題について示した.
著者
小川 晋 安間 陽子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.I_349-I_356, 2011 (Released:2012-03-30)
参考文献数
2

品川区では公園の新設および改修を実施するにあたり,住民説明会やワークショップ,パブリックコメント等を行い,地域住民の多様なニーズを収集して,公園の計画・整備・維持管理にあたっている.しかし,従来の住民説明会等では,多くが大人のみの参加で,遊具などはじゃまだからいらないといったような大人の意見・要望が公園づくりに反映される結果となっており,本来公園をよく利用する子ども達の意見を聞く状況になっていなかった. そこで,平成20年4月に新しく策定された品川区基本構想の中で謳われている,区民と区との協働によるまちづくりの一環として,区の未来を担う子ども達の手によって,新しい公園の計画案づくりを行った.また,実際の公園整備にあたっては,公園に対し,より一層の愛着を持ってもらうため,子どもを対象とした工事見学会を開催した.公園完成後においても,子どもボランティアを公募し,花の植え替えを行うなど,公園の維持管理の中でも子ども達の参加ができないか検討を行っている. このように品川区では,公共事業の中で子どもが主体的に関わる事業において,計画・整備・維持管理の各段階において継続的に子どもが参加できる仕組みを作り,子どもと大人が共にまちづくりを担う地域意識の向上を図っていく.
著者
竹谷 修一 大橋 幸子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_273-I_279, 2013 (Released:2014-03-31)
参考文献数
13
被引用文献数
3

2011年3月に発生した東日本大震災においては,地域建設業による迅速な支援活動が実施された.本研究では今後の巨大災害の備えに資する知見を得ることを目的に,支援活動が迅速に行われた要因を明らかにすることとした.分析に際しては,国土技術政策総合研究所・東北地方整備局・東北建設業協会連合会が実施した,地域建設業の活動実態調査結果を用いた.その結果,自社確保による建設機械やオペレーターが迅速な支援の要因と考える企業が被害の大きかった沿岸部で多いこと,支援活動に活用した資源は沿岸部では自社保有による確保が困難であったことなどが明らかとなった.
著者
田中 皓介 池端 菜摘 宮澤 拓也 宮川 愛由 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_33-I_42, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1

わが国の経済は,1998年から長いデフレ不況の状態にある.デフレ脱却のために,財政政策による需要創出の有効性が示唆されているにも関わらず,1998年以降の公共事業費は削減され続けてきた.その背景として,経済政策の決定に多大な影響を及ぼすと考えられる内閣府の経済財政モデルが算出する乗数効果の小ささが挙げられる.そこで本稿では,内閣府モデルの妥当性の検証を行った.その結果,内閣府モデルには輸出入均衡値という概念が導入されており,輸出入を通じて均衡への調整が行なわれる構造が存在することを指摘した.その上で、マクロモデルに均衡値概念を導入することによって算出される乗数効果が大きく低下することを実証的に示すとともに,均衡値を導入することの不当性を明らかにした.
著者
矢部 明人 宮本 文穂 礒田 聡史 谷 信幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.102-120, 2013 (Released:2013-06-20)
参考文献数
28
被引用文献数
1 3

現在,日本国内の橋梁維持管理の現場では,目視や各種センサを使ったモニタリング(Structural Health Monitoring:SHM)によって定期的に変状検知が実施されている.特に常時監視についてはSHMの有効性を示す研究成果が報告されている.一方で,SHM導入・維持に関する各種コストや技術的課題が指摘されており,より簡便な手法の開発が必要となっている. 本研究では,SHMに関する各種問題を解決する手段の一つとして,国内の多くの橋梁がスパン10m~20m程度の短スパン橋梁であることを鑑み,それらを対象に,公共交通機関である路線バスを利用した新たなモニタリング手法の提案および検証と実証実験を行った.
著者
猪熊 明 志村 満 小泉 力
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.119-125, 2014 (Released:2014-12-19)
参考文献数
7

日本を代表する企業である「トヨタ」の生産方式は,その生産性の高さから日本や海外の多くの企業で研究され導入されてきた.さらに海外では,この生産方式を「建設工事」に応用しており,「Lean Con-struction(LC)」と呼ばれ多くの現場で導入されている.しかし,この方式は日本の建設現場では普及せず,今日に至っても特段の実績を残していない. 本研究は,LCへの理解を進めるために,現在のトヨタ生産方式を踏まえた新しいLCの定義を提案した.またLCの普及の可能性を探るために,LCと認識せず土木分野に適用されている例などを調べ,LCの適用しやすい工種・条件などについて考察を加えた.
著者
小田 幸伸 新見 泰之 小泉 勝彦 坪井 英夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.11-25, 2018 (Released:2018-11-20)
参考文献数
19

徳島県に所在する地方港湾撫養港の海岸保全施設において,南海トラフを震源とする地震による津波から背後地域を防護するため,既設の海岸保全施設を改良する事業を実施した.当該事業においては,様々な制約条件がある中で,適した既存の地盤改良工法を選定するだけではなく,地盤改良を行う作業船の改造,当時は開発中であった砂圧入式静的締固め工法の採用,及び,背後企業体の施設更新に併せた工事による作業用地の確保といった,主として地盤改良に関するマネジメントが効果を発揮した.本論文においては,厳しい施工条件下での既設護岸の耐震化にあたって,地盤改良工法の選定にかかるマネジメントによって対応した事例について述べる.
著者
高橋 明子 石田 敏郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.I_69-I_79, 2011 (Released:2012-03-30)
参考文献数
18

建設業での死亡災害事例を分析した先行研究により,建設作業現場におけるコミュニケーションエラーの発生パターンは記号化・メッセージ型,媒体型,理解型に分類された.これらの結果を基とし,本研究では建設作業従事者を対象とした質問紙調査を実施することにより,建設作業従事者のコミュニケーションエラーのリスクの程度に関する認識と職位間の認識の差異の検討を行った(n=811,管理者149名,職長208名,作業員454名).その結果,管理者はコミュニケーションエラーの全パターンのリスクを比較的高く評価した.一方,職長及び作業員は比較的類似した評価をし,パターンによってリスクの評価が異なった.また,コミュニケーションエラーの背後要因に関しては,「作業前の打ち合わせ不十分」「確認不足」が全パターンに共通して回答率が高く,職位間に認識の差異は見られなかった.さらに,職位間で回答率に有意差の見られた複数の背後要因について作業員の認識の低さが指摘された.建設作業現場における労働災害防止に役立てるためには,管理者がコミュニケーションエラーのリスクに関して職位間で認識が異なることを理解し,コミュニケーションエラー防止対策を検討する必要性がある.
著者
森 芳徳 宮武 裕昭 久保 哲也 井上 玄己
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_77-I_87, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
9
被引用文献数
3

近年,大規模な土工構造物が地震等により甚大な被災を受ける場合がある.被災によって遮断された交通機能は早期に回復することが求められ,復旧には被災現場の状況に応じて交通機能を効率よく且つ迅速に回復できる工法の選定が必要とされる.現場の実態調査から,被災現場では大型土のうを用いた応急復旧の採用が多く見られる.大型土のうは現場の状況に柔軟に対応でき簡易的に復旧可能であることから多くの被災現場で採用されていると考えられる.しかし,従来の大型土のうは仮設構造物であるため,本復旧の際には撤去作業が必要となり,本復旧が完了するまでには時間を要する.被災した土工構造物を効率的に本復旧するためには,大型土のうを用いた応急復旧盛土をそのまま本復旧として活用することが有効であると考えられる. 本研究では,道路盛土災害事例から崩壊形態や現場の制約条件による復旧対策手法等について分析・整理するとともに,応急復旧として活用の多い大型土のうに着目した復旧モデルを考案し,大型土のうを用いた復旧盛土の本設構造物としての適用性について,動的遠心力載荷模型実験及び実大実験を実施し,変形挙動や施工性等を確認・検証した.
著者
野地 大樹 堀田 昌英
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.38-50, 2019
被引用文献数
1

<p> わが国の水道事業は管路等の施設が今後一斉に更新期を迎える一方,人口減少による収入の減少が予測され,事業の持続可能性に多くの問題を抱えている.その解決策として官民連携手法,とりわけコンセッション方式への注目が高まっているが,現状では水道施設の大部分を占める管路の維持管理・更新が民間事業者の事業範囲から除外される事例に占められており,その効果は限定的である.本研究ではコンセッション方式において,民間事業者へのインセンティブ付与のために事業実績に応じて契約延長及び追加的報酬の効果を定式化し,千葉県柏市水道事業の実際のデータを用いて分析を行った.その結果,管路の維持管理・更新まで含めたコンセッション契約を行う場合,事業実績に応じて契約延長を行う方法が適当であることを示した.</p>
著者
草柳 俊二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.I_137-I_144, 2014 (Released:2015-02-28)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

我が国においてWTO政府調達協定が発効したのは1996年1月であった.発効から20年近くが経過し,本協定への対応策は完備したように見える.だが,契約管理の面で解決しなければならない問題が多く残されている.最も顕著な問題はWTO政府調達協定の第15条の限定入札に絡むものである.国土交通省を始めとして,ほとんどの発注機関が追加工事の額が原契約額の50%以上となった場合,超過額は支払できないといったルールを設定している.我が国の公共工事は国際市場での実態とは相当に異なった執行システムで動いており,その相違が対応策の理論的整理の面で大きな障害となっている.現在,TPP協定の交渉が進められているが,国際協定への対応策の理論整備は喫緊な問題として捉えなければならない.