著者
池田 公史 澁木 太郎 平 知尚 井上 佳苗 山口 将太 福士 耕
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.540-549, 2023-11-01 (Released:2023-11-10)
参考文献数
26

肝細胞癌の薬物療法はソラフェニブ,レンバチニブなどの分子標的治療薬に代わり,アテゾリズマブ+ベバシズマブやデュルバルマブ+トレメリムマブといった免疫療法が主流となった.免疫療法が有効でない場合や免疫療法の適応がない場合に分子標的治療が選択される.年齢,Performance status,肝予備能,治療効果,有害事象などを考慮の上,治療法の選択が必要である.現在,Early stageでは根治治療の周術期治療,Intermediate stageでは肝動脈化学塞栓療法との併用療法,Advanced stageの一次治療,二次治療では新たな薬剤や併用療法などの開発が行われており,どのStageでも薬物療法が行われるようになった.これまで局所療法が主体だった肝細胞癌の治療も,薬物療法の併用療法が積極的に試みられるようになり,新たな治療開発は,薬物療法が中心となって行われている.
著者
澁木 太郎 川副 広明 水田 敏彦
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.647-652, 2018-11-20 (Released:2018-11-28)
参考文献数
19

症例は32歳女性.30歳時(50 kg)から姑へのストレスにより体重減少が出現.32歳時には26 kgまで低下し体動困難となったため当院内科に紹介.常食1000 kcal/日で食事を開始しほぼ全量摂取できていたが,ASTは178 IU/l(第1病日),311 IU/l(第7病日)と上昇.Refeeding症候群による肝機能異常と考え摂取カロリーを500 kcal/日に制限したところ,その4日後に急激な肝機能増悪を認めた.少量の糖質を含む輸液を行ったところ肝逸脱酵素は急速に改善したが,血清K,P値の急速な低下があり適宜補充した.その後,肝逸脱酵素,PT%,電解質は全て正常化し他院精神科へ転院となった.近年,神経性食思不振症に伴う肝機能異常の原因としてautophagyが注目されている.本症例の経過をふまえて神経性食思不振症における肝逸脱酵素上昇の機序に関して考察した.