著者
澤井 晃 山口 秀和 内山 和宏
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.122-127, 1995-07-30

アカクローバへ栄養繁殖形質を導入して永続性の向上を図るため,T. mediumとアカクローバとの雑種胚をコルヒチンを含む培地で培養した。再生した21個体のうち,1個体が染色体数が倍化した複倍数体であった。この複倍数体を柱頭親としてアカクローバと戻交雑を行い,胚培養により植物体を育成した。戻交雑第2代の花粉稔性は2.3-36.8%で,アカクローバの授粉により完熟種子(戻交雑第3代)が得られた。戻交雑第1代の半数が根茎を有し,そのほかの個体は直立型の根茎が地中に埋没する冠根部を形成した。したがって,この稔性のある戻交雑後代はアカクローバの永続性向上に有用な素材である。
著者
澤井 晃
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.135-141, 2012-09-28 (Released:2012-12-29)
参考文献数
35

抗酸化能がトウモロコシ茎葉の乾物分解率へ及ぼす影響を明らかにするため,紫トウモロコシ自殖系統と通常の自殖系統との一代雑種について,抗酸化能の指標であるDPPHラジカル消去活性とセルラーゼによるin vitro乾物分解率との関係を調査した.その結果,乾物分解率は抗酸化能と有意な正の相関を示した(r=0.450. P<0.001).その回帰係数は,分解された乾物の平均モル質量が,2,240 g/モルTrolox相当量であることを示した.抗酸化能測定に使った1%TFA抽出物は,セルラーゼで分解された乾物重の74%を占め,乾物分解率と直線的な関係にあった.1%TFA抽出物の加水分解物と薄層クロマトグラフィーはフェルロイル化糖類の存在を示し,その蛍光の強さは乾物分解率が高いほどまた抗酸化能が高いほど強かった.これらの結果は,紫トウモロコシの茎葉に含まれる抗酸化能により,通常は細胞壁の多糖類に酸化的に結合するはずのフェルロイル化糖類が可溶化するため,乾物分解率が増加することを示す.