著者
澤村 貞昭 田中 和生 古賀 泰裕
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.1054-1063, 1999-10-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
17
被引用文献数
11 11

無菌マウスに腸管出血性大腸菌O157: H7 (以下0157) 1×105CFUを感染させると感染が成立し, 感染8~9日後にマウスは全例死亡した.この感染動物実験系を用いてO157感染症に対する抗生物質療法の有効性を検討した.KM, DOXY, MINO, CP, CCL, AMPC, FOMおよびMFLXの8剤についてMICを測定し, 嫌気的条件下で低いMIC値を示したFOM, NFLX (FOM, 0.78;NFLX, 0.10μg/ml) をO157感染無菌マウスに投与した.O157感染3時間後よりFOM (500mg/kg/day) 或いはNFLX (50mg/kg/day) を1日2回, 連日5日間投与したところ, 生残率はそれぞれ83.3%, 100%と著明に改善し, いずれの抗生物質を投与した群でも糞便中にはべ口毒素は検出されなかった.次にFOMの投与開始時間を感染3, 6, 12, 24時間後にしたところ生残率はそれぞれ100, 100, 0, 0%であった.即ち, FOM, NFLXは感染早期に投与を開始するとべ口毒素を放出する事なく0157を除菌する事が明らかとなった.