著者
澤田 好江
出版者
日本福祉大学子ども発達学部
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 = THE JOURNAL OF CHILD DEVELOPMENT (ISSN:18840140)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.113-127, 2018-01-31

本稿は, 2007 年度の小学校6 年生を対象にした, ボールに着目させた総合的な学習の一実践である. 筆者は当時, 小学校教員であった. 担任していた学級には4 人の外国人の子どもが在籍し, 彼ら彼女らは「いじめ」や排除の対象となっていた.また, 野球, サッカー, バレーボール, バスケットボール等のスポーツに親しむ子どもが多く, 子ども達は, 身近なボールから課題を見つけ, その課題を追究する中で, ボール製造国に視点を移させながら, ボール製造国が実は学校に行けない子ども達の多い国, 紛争や戦争に巻きこまれたり, 貧困な国であったりする事実に気付いていく. 子ども達は自分の決めた「マイカントリー」(発展途上国) を調べる中で, スポーツ用品店の方, ボール製造社や新聞社へ質問状を送り, 係りの方から返答をもらう活動, 国際センターへの聞き取り調査, 外国人留学生や海外ボランティアの経験のある保護者, セーブチルドレンの会の方の講演会等, 様々な活動を通じて, それらの方と繋がりながら, この探究活動を行っていった. そして, 発展途上国の子ども達の置かれた状況=貧困, 格差, 紛争, 児童労働, 非識字率の高さ, 生活困難等を調べていきながら, 世界でどのような取り組みが行われ, 日本に住む自分達は果たして「幸せ」と言えるのか, 真剣に討論し, 考えていった実践である. 結果として, 本実践は, 2008 年度版学習指導要領, 並びに2020 年度版新指導要領の目標にも合致し, なおかつ地球市民教育という観点からも意義ある学びであったこと. また, 学級内の子ども達に, 外国人の子どもへの「いじめ」や排除を乗り越えさせ, 「共生」, 「理解」を学級内に培っていきたいという, 教師の総合的な学習に期待する願いも達成できたこと. この2 点を結論付けようとするものである.