著者
澤田 挙志
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.343-348, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
21

1980年代以降、文化や芸術に注目し都市の活性化を図ろうという取り組みが増加している。その代表的なものとして、創造都市と呼ばれる取り組みがあり、現在、世界で120を超える都市が創造都市を標榜した取り組みを行っている状況にある。このような現象に関して、現状においては、文化や芸術、特に創造都市をめぐる議論では事例紹介が多くを占め、具体的な政策内容や政策導入に至った経緯、そしてその意義等を詳細に検討したものはほとんどない。そこで、本研究では、日本でいち早く創造都市政策を進めてきた金沢市に注目し、市が文化や芸術の中でも特に注力してきた「工芸」に焦点を当てて論じる。そして、金沢の創造都市政策に連なる「工芸」関連施策の特質の一端及び「工芸」が金沢においてどのような意味を持って来たのかを明らかにした上で、都市の近代化においていかなる役割を果たしたのかという論点に立ち、金沢の創造都市政策に検討を加えた。結果として、「工芸」のあゆみは金沢の都市のあゆみを象徴していること、金沢の創造都市政策は「工芸」に関する各種の振興策や従来から進めてきた文化都市政策の延長線上に位置づけられることが明らかになった。