著者
濱本 博美 清水 一紀 佐々木 元章
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.429-434, 2016-06-30 (Released:2016-06-30)
参考文献数
16

我々は妊娠成立と同時期に急性発症1型糖尿病を発症した2症例を経験した.症例1は10代女性,口渇,多飲が出現した数週後に妊娠が判明し,産科を受診.体重減少が著明で血液検査にてHbA1c 12.5 %,随時PG 790 mg/dL,抗GAD抗体陽性,ケトアシドーシスを呈し,急性発症1型糖尿病と診断した.症例2は30代女性,高血糖症状を訴えて内科を受診.HbA1c 10.1 %,随時PG 599 mg/dL,抗GAD抗体陽性,ケトアシドーシスを呈し,急性発症1型糖尿病と診断した.その3か月後に腹部膨満を契機に妊娠が判明.いずれの症例も,逆算すると妊娠成立と1型糖尿病の発症が同時期であり,またHLA DR9を有していた.妊娠に合併する1型糖尿病の多くは劇症1型で妊娠後期に集中するため,稀なケースと考えられる.妊娠悪阻とケトアシドーシスの症状は類似しているため,妊娠と1型糖尿病の診断には注意を要する.