著者
濱本 貴章
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.65-75, 2004-03-01 (Released:2017-08-28)
参考文献数
37

本研究は,木材搬出技術の技術的発展を理論的に検討した上で,単軌木馬運材の事例を通して,搬出技術近代化において量的近代化(技術的に在来技術と連続している近代化)が行われる意義とそれが果たした役割を明らかにすることを目的としている。事例とした亀山営林署管内深山国有林の単軌木馬は,木馬の危険性を除去し,作業効率を向上させるために1937年に導入された。深山国有林の傾斜は木馬に適し,さらに大径材が賦存し,かつ地元労働力を雇用しなければならなかった。そのような条件下で,技術者は木馬の量的発展を選択した。戦後,単軌木馬運材は再び注目され,深山国有林でも新技術が考案された。しかし,この頃には機械集材が現実化したことによって,単軌木馬は次善策と考えられるようになり,その積極的意義は失われた。深山国有林の単軌木馬は深山国有林の事業終了と共に廃止され,在来技術と質的近代化(在来技術と技術的に連続しない近代化)との間で,いわばつなぎ役のような役割を果たしたことになる。