著者
濱﨑 愛子
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.7-10, 2021-03-31 (Released:2021-06-11)
参考文献数
12

ツキノワグマにおいて,年輪構造の観察による年齢査定に選択すべき歯を検討する目的で,飼育下にある0歳のツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)9頭を対象に,永久歯の萌出時期を観察した。その結果,歯の種類によって生え換わりの時期が異なることが明らかになった。最も早く萌出した永久歯は下顎第一前臼歯であった。最も遅く2月に萌出した犬歯を最後に,飼育下のツキノワグマでは生後約1年間ですべての永久歯が萌出することが確認された。これにより,生体からの年齢査定を目的とした抜歯には,最初の年輪(暗層)に先立って形成される明層が広く判読が容易な下顎第一前臼歯を第一選択肢とすべきであることが示唆された。