著者
二宮 省悟 濵田 輝一 吉村 修 楠元 正順
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1673, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】我々は,H23年度から臨床実習指導体制の構築の検討を目的に質問紙調査を行い,当学会にて発表してきた。現状は,臨床実習指導経験者(以下,指導者)は自身の学生時代や就職後の体験的・経験的教育を行っていることが把握できた。今回は,指導者を臨床経験年数別に群として区分し,臨床実習指導で「困ったこと」について,どのような意識の違いがあるか比較検討することを目的とする。【方法】調査期間はH25年8月からの8か月間。42施設の理学療法士を対象として任意に回答要請し,質問紙調査を行った。回答方法は無記名で,選択肢質問と自由記載とした。経験年数層に区分し,「困ったこと」について分析した。自由記載の回答はテキスト形式(.txt)にデータ化し,KHCoderを用いてテキストマイニングを行った。分析した内容は,頻出語抽出と階層的クラスター分析及び共起ネットワークの作成とした。さらに多次元尺度構成法(MDS),併合水準(非類似度)による分析を加え,図表化した。【結果】有効回答は479名(臨床経験年数8.5±6.1年)。経験年数層に区分した各群は,A群(0-5年)181名,B群(6-10年)164名,C群(11-15年)80名,D群(16年以上)54名とした。指導に「困った」と回答した者は,A群158名(87.3%),B群150名(91.5%),C群77名(96.3%),D群49名(90.7%)であった。困った内容の第1位は,A群では「指導に自身がない」であった。その他の群では「学生の資質の問題」であり,経験年数層を増すごとに割合が上がった。自由記載では,A群2859語,B群3193語,C群1564語,D群951語が抽出された。データより最頻150語を抽出した結果,A群は「学生(出現回数;55)」,「指導(45)」,「レポート(36)」,「分かる(24)」,「実習(20)」,B群は「学生(50)」,「指導(44)」,「レポート(25)」,「提出(22)」,「分かる(21)」,C群は「指導(30)」,「学生(26)」,「実習(13)」,「レポート(9)」,「分かる(7)」,D群は「指導(20)」,「学生(18)」,「実習(10)」,「分かる(5)」,「レポート(4)」が上位5番目までの最頻語であった。その後,クラスター分析(Ward's methodを使用:経験者A群,B群は出現回数5回以上,C群,D群は出現回数3回以上を対象)を行った。その結果,経験者A群,B群は6つ,C群は5つ,D群は4つのクラスターに分類された。また共起ネットワークからは,全てが「学生」を中心として,各群で特徴的な頻出語との強い繋がりを示し,多次元尺度構成法,併合水準でも相違が認められた。【結論】今回,指導者の指導に際し,「困ったこと」の現状が把握できた。それは,臨床経験年数層によって違う内容である事も判明した。またアンケート結果から,指導者は「困ったこと」の解決のためには,日本理学療法士協会の倫理規程や業務指針を念頭に置き,指導について積極的に研鑽する必要性が示唆された。
著者
二宮 省悟 濵田 輝一 吉村 修 楠元 正順
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1723, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】我々は,H23年度から臨床実習指導体制の構築の検討を目的に質問紙調査を行い,当学会にて発表してきた。現状は,臨床実習指導経験者(以下,指導者)は自身の学生時代や就職後の体験的・経験的教育を行っていることが把握できた。昨年は,「実習で困ったこと」について臨床経験年数により意識の違いがあるのかを知ることを目的に臨床経験年数を4群に分け,比較検討し発表した。今回は得たデータの全体像を,テキストマイニングを用いて客観的に把握することを目的とする。【方法】調査期間はH25年8月からの8か月間。42施設の理学療法士を対象として任意に回答要請し,質問紙調査を行った。回答方法は無記名で,選択肢質問と自由記載にて「困ったこと」について分析した。自由記載の回答はテキスト形式にデータ化し,KHCoderを用いてテキストマイニングを行った。分析した内容は,頻出語抽出と階層的クラスター分析及び共起ネットワークの作成とした。さらにKruskalの非計量多次元尺度構成法(以下,MDS)による分析を加え,図表化した。【結果】回収部数は790名,有効回答数は689名(87.2%)であった。その内479名(臨床経験年数8.5±6.1年)の臨床実習指導の経験者を分析対象とした。指導に「困った」と回答した者は,434名(90.6%)であった。困った内容の第1位は,「学生の資質の問題」(回答総数に対する%:23.6%),第2位は「指導に自信がない」(20.7%),第3位は「学生の問題がつかみにくい」(18.5%)であった。自由記載では8299語が抽出された。データより最頻150語を抽出した結果,「学生(150)」,「指導(138)」,「レポート(74)」,「分かる(74)」,「実習(59)」,「提出(50)」,「言う(40)」,「理解(34)」,「患者(33)」,「自分(30)」が上位10番目までの最頻語であった。その後,併合水準(非類似度)を算出した上で,階層的クラスター分析(ユークリッド距離によるWard's methodを使用:出現回数15回以上を対象)を行った。その結果,4つのクラスターに分類された。またJaccard係数を算出し,単語間のネットワーク図を描画した共起ネットワーク(サブグラフ検出:媒介)からは,「学生」「指導」「分かる」を中心として,特徴的な頻出語との強い繋がりを示した(Node18,edge60,Density0.392,Min.Jaccard0.05)。さらに抽出語を用いてMDSを行ったところ,幾何的図形により単語の関係性を網羅的に示すことができた。【結論】今回,指導者の指導に際し,「困ったこと」の現状が把握できた。臨床実習指導者の共通の「困ったこと」としては主に「レポート指導」に帰着していることも判明した。このことは従来いわれている問題点と合致するものである。しかし,レポート課題を指導のツールに用いていることが多く,未だに解消できていない現実がある。今後も臨床実習について積極的に分析し,その対応策を考える必要性が示唆された。
著者
二宮 省悟 濵田 輝一 吉村 修 楠元 正順
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1602, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】臨床実習は,卒前教育の中で臨床に向けての基盤・育成を担っている。我々は,より良い臨床実習指導体制の構築の検討の為に,H23年度から臨床実習指導の現状把握を目的に質問紙調査を行い,第48回及び第49回日本理学療法学術大会にて発表してきた。現状は,ほとんどの指導者が教育論を主軸とした教育法を学んでいるわけではなく,自身の学生時代や就職後の体験をベースとした体験的・経験的教育を行っていることが把握できた。今回,臨床実習指導経験者(以下,経験者)ならびに指導未経験者(以下,未経験者)が臨床実習指導をどう受け止めているのか,「実習指導を担当した場合のメリットとデメリット」の観点から比較検討することを目的とする。【方法】調査期間は平成25年8月から平成26年3月までの8か月間。42施設の理学療法士を対象として任意に回答要請し,質問紙調査を行った。回答方法は無記名で,自由記載とした。質問紙の回収後は,回答の信頼性保持の為,社会的望ましさ尺度で不適切と判断されたものは除外した。自由記載に関しては,得た回答をテキスト形式(.txt)にデータ化し,KHCoderを使用してテキストマイニングを行った。経験者と未経験者(実習指導を想定して回答)のメリットおよびデメリットについて頻出語を抽出し,階層的クラスター分析と共起ネットワークの作成により,実習指導についてどのような意識を持つかを分析した。【結果】790名の回答が得られ,有効回答数は689名であった。そのうち指導経験があると回答した484名(男性309名,女性175名,臨床経験年数8.5±6.1年)と未経験の205名(男性130名,女性75名,臨床経験年数2.5±2.0年)を分析対象とした。「実習指導のメリット」について,経験者からは3830語,未経験者からは701語が抽出された。またデータより最頻150語を抽出した結果,経験者は「自分(出現回数;167)」,「勉強(97)」,「自身(80)」,「成長(79)」,「指導(72)」が上位5番目までの最頻語であった。同様に未経験者からは「自分(29)」,「勉強(21)」,「知識(16)」,「指導(10)」,「学生(8)」が抽出された。更に,「実習指導のデメリット」について,経験者からは3017語,未経験者からは476語が抽出された。経験者は「時間(295)」,「業務(93)」,「負担(50)」,「指導(33)」,「増える(32)」が上位5番目までの最頻語であった。同様に未経験者は「時間(46)」,「業務(25)」,「指導(11)」,「自分(11)」,「負担(8)」が抽出された。その後,クラスター分析(Ward's methodを使用:経験者のメリットは出現回数31回以上,未経験者は5回以上。経験者のデメリットは出現回21回以上,未経験者は3回以上を対象)を行った。その結果,経験者のメリットについては,「自分の勉強と成長」,「自己学習」,「学生へ指導する機会」,未経験者については,「自己研鑽」,「自分の知識・技術の復習と成長」,「自分の勉強」の各3つのクラスターに分類された。更に,経験者のデメリットでは,「学生指導」,「仕事が増える」,「時間的制約と業務,患者及び精神面への負担」,未経験者については,「負担が増える」,「業務や指導に自分の時間を費やす」,「支障を来す」の各3つのクラスターに分類された。加えて経験者,未経験者の共起ネットワークからは,指導のメリットについては両者とも「自分」が中心となり「成長」,「勉強」と強い繋がりを示した。指導のデメリットについては両者とも「時間」が中心となり「業務」,「制約」と強い繋がりが示された。【考察】未経験者が学生指導を経験するまでは,「指導のイメージ」が分からない状況の中で,不安を感じる。調査結果より,指導経験前に感じていたことが指導を経験した後も同じメリットやデメリットを感じていることが予想された。また,デメリットの解消には,職場での実習教育に関する話し合いや,教育関連の勉強会や講習会を受講するなどの方策が十分行う必要があることが推測された。今後も充実した臨床実習教育のあり方について,引き続き検討が必要であろう。【理学療法学研究としての意義】未経験者は今後臨床実習指導者になる可能性が高く,指導者としての導入教育が必要となる。今回,経験者や未経験者が感じている臨床実習への意識を把握できたことは興味深く,アンドラゴジーを念頭に置いた,より良い臨床実習教育システムの構築に結びつける為のstepとして,大変意義がある。