著者
瀧 孝雄
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

薄層クロマトグラフィー(TLC)で分離したリン脂質や糖脂質をプラスチック膜(polyvinylidene difluoride、PVDF)に効率よく転写する方法を確立した。これをTLC blottingと名付け、PVDF膜に転写された脂質を直接質量分析で構造解析する方法を検討した。この結果、次に示す方法を確立した。TLCプレートで分離した脂質をプリムリン試薬で発色させ、色鉛筆でバンドをマークした後、PVDF膜に転写する。マークは脂質と共にPVDF膜に転写される。マーク部分をパンチアウトし、これを質量分析器のターゲットチップにトリエタノールアミンとともに付着させる。分析はCs^+を20kVで照射し、2次イオン質量分析法によって行った。その結果、得られたスペクトルはノイズが低く抑えられ、分子イオンばかりでなくフラグメントイオンがきれいに検出された。検出感度はTLCのバンドとして0.1μgで充分きれいなスペクトルが得られることが明らかとなった。この方法を用いてラット乳癌細胞の転移性を異にする三種類の細胞株について糖脂質組成と構造の比較解析をおこなった。この結果、1x10^7個の細胞から分離した糖脂質で、それぞれの細胞株のすべての糖脂質を構造決定できた。従来の方法では1x10^9-10^<10>個の細胞が必要であり、分離した糖脂質についても主要糖脂質の構造解析ができる程度で、その分析には2年程度の期間が必要であった。本法の導入により糖脂質の構造解析は極めて容易になり、微量で短期間(2週間以内)に行えるようになった。またPVDF膜に転写した糖脂質に対する微生物の結合実験の可能となり、本法を応用したリガンドの構造解析が可能となった。