著者
荒殿 誠 瀧上 隆智 松原 弘樹
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

1.全反射XAFS法による1-decyl-3-methylimidazolium bromide(DeMIMB)の表面吸着膜とミセル表面における対イオンの溶媒和構造単量体領域から臨界ミセル濃度以上の領域までの種々の濃度におけるスペクトルは等吸収点をもち、DeMIMカチオンとは相関のないfreeな状態と相関のあるboundである状態を表すスペクトルの和として表すことができることが示された。詳細な解析により、freeは6水和状態にあり、boundは4水和に水和数が減少し、第2配位圏でDeMIMカチオンの炭素あるいは窒素に配位した状態であることが示された。このことから臭化物イオンは、通常のカチオン界面活性剤系のように、イミダゾリウムカチオンから水溶液内部へ向かう電気2重層に分布していることが明らかとなった。BF4イオンの場合にはDeMIMカチオンとは同じ平面状にあると示唆されていることから、表面でのアニオンの位置したがって表面構造は、アニオンにより大きく異なることが示された。2.HMIMBF4と1-ブタノール混合系の水溶液表面吸着のシナジズム吸着の相図と吸着の剰余ギブズエネルギーから、HMIMBF4と1-ブタノールの分子間には有効なイオンー双極子相互作用が働かないことが明らかになった。この結果は次の対イオンの配置を支持している:イミダゾリウム陽イオンは対アニオンとほぼ同一平面上にあってイオンペアーを形成し、ブタノールヒドロキシル基の双極子との相互作用が有効に働かない。またの値は表面張力の低下に伴い正からゼロに近づくことから、吸着量が増加するとブタノールとイミダゾリウム陽イオンが有効になってくる。すなわちイミダゾリウム陽イオンは対アニオンとほぼ同一平面上にあってイオンペアーを形成し、通常のイオン性界面活性剤の電気2重層と異なる構造をもつという描像を支持している。