著者
瀬上 哲秀
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.811-821, 1994-12-25

数値予報モデルの出力結果を直接用いて、客観的に天気翻訳する手法を開発した。この手法はモデルの予想雲量、1時間雨量,そして地上の気温と相対湿度から、7種類の天気、つまり快晴・晴れ・薄曇り・曇り・雨・みぞれ・雪を作り出す。この手法を気象庁のルーチンのメソスケールモデルに適用し、観測された天気を用いて検証した。その精度は6時間の持続予報と同程度であった。このことは、この手法が客観的な天気翻訳として十分の精度を持っていることを示している。さらに、この手法から作られる天気分布図は従来からの出力である海面気圧や500hPa高度などの資料と比べて、メソスケールの擾乱を表現するのに利点がある。また、降水タイプの予想にも良い精度があることが示された。
著者
高野 功 瀬上 哲秀
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.377-391, 1993-06-25
被引用文献数
1

数値予報モデルの降水の立ち上がりを改善するため、気象庁の局地モデル(JSM)を用い、メソスケールの対流雲システムを対象として初期値をいくつか変えた実験を行った。実験では、予報解析サイクル(FAサイクル)、非断熱加熱を含むNNMI、および水蒸気の初期値化の効果を調べた。またNNMIの非断熱加熱にはモデルの物理過程の計算したものと、雨量強度の観測値から推定したものの2種類の取扱いを試みた。現業システムによる基準予報では、降水の立ち上がりは悪く、雨が降り出した後もその位置に誤差がみられた。その要因としては初期値に雲システムに関わるメソスケールの情報が適切に表現されていなかったことが考えられる。FAサイクルを適用した事例では、下層の渦度パターンに見られるように初期値が改善された。その結果、基準予報にみられた予報後半の降水域の誤差は小さくなった。モデルの物理過程を使った非断熱NNMIの結果は発散成分をほとんど変えなかった。NNMIでの非断熱加熱を調べてみると非常に弱く、それが断熱の場合とほとんど同じ結果をもたらした原因と考えられる。一方、雨量強度を用いたNNMIでは初期値に降水域に強い発散成分と上昇流が生じた。しかしこの場合も予報では非断熱加熱は弱く、こうした運動場は維持されず急速に減衰してしまった。水蒸気場の初期値化はモデルの物理過程が観測された雨量強度と整合した潜熱を放出できるための条件を満たすことを意図している。解析でのFAサイクルと雨量強度を用いたNNMI、それに水蒸気場の初期値化の3つの手法を組み合わせた事例では、予報開始直後から観測値に近い降水が予想され、初期値の効果は長時間認められた。