著者
小谷 清子 高畑 彩友美 瀬古 千佳子 吉井 健悟 東 あかね
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.105-115, 2022-04-01 (Released:2022-05-24)
参考文献数
50

【目的】地域の若年期からの循環器病予防をめざして,乳児の父母の推定1日尿中食塩排泄量(以下,食塩排泄量)および尿中Na/K比を評価し,食習慣との関連を明らかにすること。【方法】2015年10月から1年間の,京都府内3市町の全ての乳児前期健診対象児393人の父369人,母386人,計755人を対象とした。早朝第1尿から食塩排泄量と尿中Na/K比を算出した。自記式食習慣調査は食物摂取頻度と減塩意識の13項目で,これらと食塩排泄量および尿中Na/K比との関連について,単変量解析と多変量解析を行った。解析対象は,父166人(年齢中央値34.0),母200人(同32.0),計366人(解析率48.5%)であった。【結果】食塩排泄量(g/日)(中央値)は父10.2,母9.9,尿中Na/K比(mEq比)(中央値)は父4.0,母3.9であった。多変量解析の結果,食塩排泄量と食物摂取頻度については有意な関連がなく,減塩意識ありとの関連は父のオッズ比0.83(95%信頼区間0.44~1.60),母のオッズ比0.55(0.28~1.09)であった。尿中Na/K比と食物摂取頻度については母において有意な関連は認めなかった。父において果物摂取と有意な正の関連を認めたが,その解釈は困難であった。【結論】乳児の父母の食塩排泄量と尿中Na/K比を評価し,これらと食物摂取頻度や減塩意識に有意な関連を認めなかった。
著者
瀬古 千佳子 松井 大輔 松川 泰子 小山 晃英 渡邉 功 尾崎 悦子 栗山 長門 水野 成人 渡邊 能行
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.30-41, 2016 (Released:2016-02-01)
参考文献数
23

ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染は胃がんの確実な発がん因子である。H. pylori感染から慢性萎縮性胃炎への進展過程における摂取食品との関連については多くの先行研究が行われているが, 栄養素摂取量との関連についての報告は少ない。そこで, 本研究はH. pylori感染者における慢性萎縮性胃炎陽性者と陰性者の栄養素摂取量の差異を検討した。対象者は京都在住の35歳から69歳までの健診参加者4,330人のうちH. pylori感染陽性者1,251人とした。解析対象者はこの内の栄養素摂取量算出を完了した女性296人とした。年齢, 喫煙, ビタミン剤服用, エネルギーによる補正を行い, 各栄養素摂取量を三分位に分けてロジスティック回帰分析を行った結果, カルシウムの中等量摂取, 多量摂取, 及び多価不飽和脂肪酸の中等量摂取は有意に慢性萎縮性胃炎のリスクを低めていた。これにより, これらの栄養素が慢性萎縮性胃炎進展の抑制と関連している可能性が示唆された。
著者
山城 美琴 瀬古 千佳子 小谷 清子 和田 小依里 吉本 優子 東 あかね
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.102-111, 2020-06-01 (Released:2020-07-17)
参考文献数
34
被引用文献数
1

【目的】学童期からの循環器病予防のために,小学6年生を対象に果物摂取の増加をめざしたクラスター割付比較対照試験を実施し,果物の摂取に関する自記式質問調査(以下,果物調査)と尿中ナトリウム/カリウム(以下,尿中Na/K)比で評価すること。【方法】地域の保健,教育担当者と大学が連携して食育プログラムを企画した。2017年7月に京都府船井郡京丹波町の小学校全5校の6年生104人(介入群:男子21人,女子27人 対照群:男子31人,女子25人)を,食育を行う介入群2校(48人)と対照群3校(56人)に割り付けた。介入群には45分の食育を各校1回実施した。果物調査は,食育前後,尿中Na/K比測定は食育2か月後に実施した。【結果】食育前の介入群と対照群の比較では,男子の行動変容段階の分布以外は有意差を認めなかった。食育後の介入群と対照群の比較では,果物摂取の週4日以上が,男子31.6%,11.8%(p<0.001),女子26.9%,0.0%(p=0.018),行動変容段階の維持期が,男子20.0%,6.3%(p=0.012),女子7.7%,0.0%であった(p=0.031)。尿中Na/K比は男女とも群間差がなかった。【結論】影響評価の果物摂取頻度と行動変容段階は改善したが,成果評価の尿中Na/K比には差を認めなかった。今後,食育内容の充実が望まれる。