著者
瀬尾 恭子
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.49-59,135, 2002-03-21 (Released:2011-05-30)
参考文献数
28
被引用文献数
1

本稿は, 人間の身体の社会性を生きられる経験からとらえつつ, それと他者 (外部) との相互作用の様態を明らかにしていこうとするものであり, それらをコンテンポラリー・ダンス「作品」の「作品以前」のプロセス, つまり「作品」の制作過程におけるコリオグラファーとダンサーの相互作用のなかに見出そうとするものである。対象は1999年6月から2000年10月の期間に筆者が実際にコリオグラファーとして制作した二作品の制作過程であり, その直接的な経験の具体的な記述を試みている。(1) 作品の構想を共有し, コリオグラファーの提示する動きやたとえとして発することばを頼りにしながらダンサーが動きを創出していくこと(2) 創出された動きは, ダンサーがそれを自動化していくプロセスにおいて意味を剥奪され, 純粋な動きになることで多様な表現の可能性に開かれていくことを分析した。以上のことから, ダンサーの動きのなかに, コリオグラファーが抱く作品の構想, 動きのモチーフと, コリオグラファーのことばから想起されるダンサー自身の経験に根ざしたイメージの絡まり合いのなかに, 両者の相互作用がみてとれる。また, そのとき身体はコリオグラファーとダンサーとの生きられる関係のなかにあることで, あるひとつの固定的な意味のなかにとどまることを拒否し, 生成の過程であり続ける。このような生成の過程は, 身体がもつ社会性の一つの実相として捉えることができる。