- 著者
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瀬川 昌也
- 出版者
- 一般社団法人 日本小児神経学会
- 雑誌
- 脳と発達 (ISSN:00290831)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.2, pp.170-180, 1989-03-01 (Released:2011-08-10)
- 参考文献数
- 76
- 被引用文献数
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自閉症の睡眠・覚醒リズム障害の特徴から, 縫線核群の早期の障害が自閉症の主病因と考え神経回路を検索した.縫線核 (Rph) 群は脳幹, 橋の背側正中部に位置し, やや外側に位置する青斑核 (LC) 群とともに, 上位中枢に広汎かつ並列的に軸索を送り, おのおのの機能の制御に重要な役割をもつ.また, 黒質線条体および背側被蓋ドーパミン (DA) 神経系に抑制性支配をなし, また下行枝は脊髄運動系, 感覚系の調整に重要な役割を有している.Rph, LCとも乳児期早期に発達の臨界齢をもち, また, Rphは男性に易障害性が高い.Rphの早期障害は, LCの障害を伴い, 社会性の欠如, 同一性の保持, 優れた機械的記憶, 睡眠・覚醒リズム障害を, DA系の障害は幼児期初期より出現する多動, 常同運動をもたらし, パニックには, RphとLCに加えDA系神経系の異常が加わった状態として説明できる.反響言語は右半球優位の表現であり, これも早期のRph, LCの障害に起因する左右大脳半球の機能分化障害によると考えられる.利き手決定の遅れ, 人称の逆転も同様の機序による.乳児期の筋緊張低下, 這行障害はRphとLC下行枝の異常によるlocomotionの障害, 幼児期の上下肢協調運動障害は前頭葉徴候の存在とともにこれら神経核障害による前頭葉の機能障害が関与すると考えられる.この考えはこれらの症状に, 5-hydroxytryptophanおよび微量のL-dopaがそれぞれ奏効することから支持される.前者は幼児期早期でより有効, 後者は0.5mg/kg/dayの少量投与が有効であったことは, Rphの障害は早期に治療する必要性が, DA系障害は後シナプス過敏症による可能性が示唆された.