著者
翁長 友理子 高吉 克典 瀬底 正治
出版者
鶏病研究会
雑誌
鶏病研究会報 = Journal of the Japanese Society on Poultry Diseases (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.223-227, 2013

沖縄県では約148万羽の鶏(ひなを含む)が飼育されており,その98.6%が1,000羽以上飼養のいわゆる一般農家で飼育されている。一方,飼養規模別の戸数割合で見た場合,100羽から1,000羽を飼養する小規模農家と,100羽未満の愛玩的に鶏を飼養する小羽数飼養者が501戸中450戸と実に90%以上を占めている。このような飼養形態の中で,一般農家における146万羽余の鶏が適切な衛生対策の下で飼育されていても,小規模農家や小羽数飼養者が飼養する約20,000羽の鶏において,ニューカッスル病(以下,ND)等のワクチンが接種されていない事例が多いことから,NDの発生リスクが懸念されている。沖縄県内でのひなの流通はほとんどが初生ひなであり,ひな購入後は飼養者が自家育成を行い,採卵鶏として供用する。一般農家においては,その間にNDワクチンを含む各種予防接種が行われるが,小規模農家においては1,000羽単位でのワクチン購入に対するコスト高への懸念があること,小羽数飼養者においては,NDという病気のことすら知らずに飼育する人も多く,最低限必要な衛生対策が何ら講じられていないのが現状であった。さらにその流通実態を調査すると,初生ひなを共同購入していたり,採卵鶏や廃鶏の販売・譲渡を行うなど,ひな導入から廃鶏処理までのいずれのステージにおいても小規模農家から小羽数飼養者への鶏の転売が行われており,その大半はワクチン未接種鶏であることが問題となっていた。その為,ひなを導入している小規模農家においていかにNDワクチンを接種させるかが,結果的に小羽数飼養者への対策にもつながっていくのではないかと考えられた。