著者
今村 佳代子 瀬上 綾 和田 みゆき 迫田 真貴子 瀬戸 梢 原口 美穂 松木田 恵美 丸山 千寿子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.277-287, 2012 (Released:2014-04-24)
参考文献数
35
被引用文献数
5

目的 母親の食生活に対する行動変容の準備性と子どもの朝食摂取の状況および家族の健康関連行動との関係を明らかにすることを目的とした。方法 調査に同意の得られた鹿児島県内の18小学校の児童1,949人と,7 校の保護者881世帯を対象として自記式調査法でアンケートを実施した。児童には,朝食の摂取状況やアンケート記入日の朝食の内容を回答させ,保護者には朝食の摂取状況と,Prochaska らのステージ理論に基づいて食生活に対する行動変容の準備性を 5 段階で回答してもらった。結果 回収率は児童が83.3%(1,624人),保護者が83.1%(732世帯)であった。朝食を毎日食べる児童は83.1%であり,15.1%の児童に欠食の習慣がみられた。アンケート記入日の朝食は98.6%の者が食べていたが,ごはんやパンなどの「主食」のみを食べていた者が15.1%おり,「主食」,「主菜」,「野菜•果物」をそろえて食べた児童は34.0%にとどまった。母親の食生活に対する行動変容の準備性は,「維持期」が28.1%,「実行期」が24.0%,「準備期」は6.9%,「関心期」は9.8%,「無関心期」は5.7%であった。そこで,既に食生活に対して何かを実行している「維持期」,「実行期」の者を『実行群』,現在食生活に対して何も実行していない「準備期」,「関心期」,「無関心期」を『非実行群』,質問に対して無回答の者を『無回答群』(25.5%)として 3 群間で比較した。母親が実行群の児童と比べて,無回答群では朝食を欠食する者が多かった(P=0.000)。調査日の朝食内容は,「野菜•果物」を食べた児童が,実行群と比べて非実行群では少なく(P=0.003),無回答群では(P=0.036)少ない傾向にあった。さらに実行群の母親に比べて非実行群と無回答群ではそれぞれ惣菜や市販弁当の利用頻度が高い傾向にあり(P=0.025, P=0.036),家族と食事や食べ物についての話し合いをしておらず(P=0.004, P=0.002),父親の喫煙率も高かった(P=0.000, P=0.000)。結論 母親の食生活に対する行動変容の準備性により児童の朝食摂取習慣や内容,および家族の健康関連行動が異なることが示唆された。今後,学童期の子どもと母親を対象とした食育を実施する際,母親の食生活に対する行動変容の準備性を考慮したアプローチをする意義は大きいと考えられた。