著者
斎藤 雄平 添田 健 瀬戸崎 修司 原田 寿夫 三村 麻郎
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.106-109, 2009
被引用文献数
1 1

収縮性心膜炎は通常,慢性的な経過をたどることが多いとされる.心嚢水貯留に対するドレナージから化膿性心膜炎となったのを契機に,急速に収縮性心膜炎を呈した症例に対して,感染活動期に心膜剥皮術を行い,1期的に治癒せしめることができたので報告する.症例は82歳,男性.心嚢水の精査目的で心嚢ドレーンが留置されたが,その7日後に膿性の排液を認めた.細菌培養でメチシリン感受性黄色ブドウ球菌が検出され,抗生剤が投与されたが,全身倦怠感,全身の浮腫,呼吸困難が出現するようになった.Swan-Ganzカテーテル検査にてdip and plateau型の右室圧波形を認めた.CTにて膿性心嚢水の貯留が疑われ,心窩部小切開にて再度心嚢ドレナージを施行したが,血行動態の改善はみられず,乏尿となってきたため,十分なドレナージが必要と判断し,胸骨正中切開によるアプローチにて開胸した.心臓周囲には膿の貯留を認め,心膜は著明に肥厚しており収縮性心膜炎の所見であった.人工心肺補助下に心膜を剥皮し,十分な洗浄後,1期的に閉鎖した.術直後より血行動態は著明に改善した.ドレーンを利用した持続洗浄と抗生剤の投与を行い,術後32日目に退院した.本例のように,感染性心膜炎では急速な経過で収縮性心膜炎へ移行することがあり,適切な外科的治療を念頭に置いた注意深い観察が必要と思われた.また,可及的な心膜切除と持続洗浄を行うことで1期的な治療が可能であった.