著者
小林 由典 大河内 博 緒方 裕子 為近 和也 皆巳 幸也 名古屋 俊士
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.33-44, 2012-01-10 (Released:2012-06-27)
参考文献数
32
被引用文献数
1

26種類のAVOCs(塩素化炭化水素17種、単環芳香族炭化水素6種類、二環芳香族炭化水素3種類)の大気および大気水相のサンプリングを、2007年から2010年まで富士山と新宿で行った。2010年における大気中AVOCs濃度は富士山頂で最も高く(7月の平均総濃度:11.6 ppbv、n=5)、新宿(10~12月の平均総濃度:7.9 ppbv、n=52)、富士山南東麓(7月の平均総濃度:6.8 ppbv、n=9)の順であった。富士山頂における単環芳香族炭化水素(MAHs)の大気中濃度は都市域の新宿や国内外の高高度観測地点に比べて異常に高く、局地的な影響を受けている可能性がある。一方、2010年における大気水相中AVOCs濃度は富士山南東麓の雨水で15.8 nM(n=8)、富士山頂の雲水で15.7 nM(n=19)であり、新宿の露水で5.33 nM(n=15)、雨水で3.36 nM(n=30)であった。富士山における大気水相にはAVOCsが高濃度に含まれており、とくに塩素化炭化水素(CHs)は富士山南東麓の雨水および富士山頂の雲水ともにヘンリー則からの予測値以上に高濃縮されていた。大気水相へのAVOCsの高濃縮は大気中濃度、気温、各AVOCsの疎水性だけでは説明ができず、大気水相中の共存物質の影響が大きいものと推測された。