著者
藤田 雅俊 大河内 博 緒方 裕子 名古屋 俊士 皆巳 幸也
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1111-1116, 2013-12-05 (Released:2013-12-28)
参考文献数
26
被引用文献数
1

Rapid and sample preparation using stir bar sorptive extraction (SBSE), followed by high-performance liquid chromatography with fluorescence detection to determine polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) in atmospheric water was studied. Applying the SBSE method to authentic atmospheric water samples revealed that rainwater in Shinjuku contained a 226 pM concentration of total PAHs, which was 10-times as much as that at Mt. Fuji, especially in a higher concentration of soluble PAHs. There was no seasonal variation of the concentration and composition of PAHs in rainwater at Shinjuku. Comparing the concentration of PAHs in rain, cloud, and dew water collected at the foot of Mt. Fuji, 5- and 6-rings PAHs were enriched in cloud water. This result suggests that cloud droplets could condense PAHs, especially high molecular weight PAHs.
著者
上野 広行 横田 久司 石井 康一郎 秋山 薫 内田 悠太 齊藤 伸治 名古屋 俊士
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.241-251, 2012-11-10 (Released:2013-03-12)
参考文献数
48
被引用文献数
2

加熱脱着GC/MS 装置を用いて、PM2.5 中のジカルボン酸、フタル酸、レボグルコサンを誘導体化して分析する迅速かつ簡便な手法を検討した。誘導体化条件を検討した結果、最適な条件として、温度320 ℃、ヘリウム流量20 mL/min、反応時間10 min、BSTFA+TMCS(99:1)とピリジンの混合比9:1、誘導体化試薬添加量10μLが得られた。添加回収試験の結果、過大な試料を用いると誘導体化成分のピーク形状が悪くなるため、試料量を制限する必要があった。非極性成分であるn-アルカン、17α(H), 21β(H)-ホパン、PAHs については、感度の点から試料量を多くする必要があり、極性成分との同時分析は困難であったものの、同じシステムで分析可能であった。この手法を東京都内の環境試料に適用して分析した結果、夏季と冬季では有機成分組成が大きく異なること、n-アルカンの濃度パターンは複数の発生源の影響を受けていることなどが示唆され、本手法は有機成分の発生源寄与等の検討に有効と考えられた。
著者
小林 由典 大河内 博 緒方 裕子 為近 和也 皆巳 幸也 名古屋 俊士
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.33-44, 2012-01-10 (Released:2012-06-27)
参考文献数
32
被引用文献数
1

26種類のAVOCs(塩素化炭化水素17種、単環芳香族炭化水素6種類、二環芳香族炭化水素3種類)の大気および大気水相のサンプリングを、2007年から2010年まで富士山と新宿で行った。2010年における大気中AVOCs濃度は富士山頂で最も高く(7月の平均総濃度:11.6 ppbv、n=5)、新宿(10~12月の平均総濃度:7.9 ppbv、n=52)、富士山南東麓(7月の平均総濃度:6.8 ppbv、n=9)の順であった。富士山頂における単環芳香族炭化水素(MAHs)の大気中濃度は都市域の新宿や国内外の高高度観測地点に比べて異常に高く、局地的な影響を受けている可能性がある。一方、2010年における大気水相中AVOCs濃度は富士山南東麓の雨水で15.8 nM(n=8)、富士山頂の雲水で15.7 nM(n=19)であり、新宿の露水で5.33 nM(n=15)、雨水で3.36 nM(n=30)であった。富士山における大気水相にはAVOCsが高濃度に含まれており、とくに塩素化炭化水素(CHs)は富士山南東麓の雨水および富士山頂の雲水ともにヘンリー則からの予測値以上に高濃縮されていた。大気水相へのAVOCsの高濃縮は大気中濃度、気温、各AVOCsの疎水性だけでは説明ができず、大気水相中の共存物質の影響が大きいものと推測された。