著者
浅見 祐弥 烏谷 亜紗子 賴 宏亮 井上 章二
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業研究 (ISSN:18828434)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.14-18, 2021

<p>窒素施肥濃度の違いが<i>Bupleurum kaoi</i> Liu. (<i>B. kaoi</i>) の生育および成分含量に与える影響を明らかにすることを目的とした.供試した<i>B. kaoi</i>は,生薬として根が用いられる台湾固有種である.本研究は硝酸安の濃度を変えたホーグランド溶液を0,2,4,10,16,22 mMの6段階に設定し,週に1度施肥を行った.また乾物生産特性および根の成分含量を明らかにした.成分分析は,サイコサポニン(SS) a,b1,b2,cおよびdの 5種類の定量分析を行った.<i>B. kaoi</i>の生育及び乾物生産特性の結果は,草丈,葉数およびSPADで10 mM以上のとき,増加傾向にあった.さらに地上部および地下部の乾物重も同様に10 mM以上で有意に高い値を示した.10 mM 以上の処理区において,生育および乾物生産の有意差はなかった.主成分であるSSa および SSd においては 16 mM 以上で有意に増加した.また SSb1,SSb2,SSc においては10 mM 以上で有意に成分含量が高いことを示し,10 mM以上で総サイコサポニンが有意に増加した.以上の結果から,窒素施肥濃度10 mM以上で根の乾物重および成分含量は飽和点に達し,最適窒素施肥濃度の指標となる可能性が示唆された.</p>