著者
中村 良成 山田 敦 照井 方舟
出版者
神奈川県水産技術センター
雑誌
神奈川県水産技術センター研究報告 (ISSN:18808905)
巻号頁・発行日
no.1, pp.21-33, 2006-03

1 ホシガレイにおいて50mm前後の小型種苗の放流の有効性を検討すべく、日本栽培漁業協会宮古事業場(現:独立行政法人水産総合研究センター宮古栽培漁業センター)で生産された20mmサイズの種苗を約1ケ月間の中間育成の後、1998年5月19日に47mmサイズ6,500尾を東京湾(横浜市金沢区八景島地先の金沢湾の水深8~9mの砂泥底)に、1998年6月2日に49mmサイズ5,300尾を相模湾(横須賀市長井地先の小田和湾の水深約6mの砂~砂泥底)に放流した。2 再捕魚がほぼ出尽くすと考えられる2001年3月末までの放流後の詳細な市場調査および聴取調査により、八景島群は直接確認104尾、間接確認74尾、合計178尾(再捕率2.7%)、小田和湾群は直接確認37尾、間接確認4尾、合計41尾(再捕率0.8%)の再捕を確認した。3 八景島放流群では、放流翌年の夏に体重500gを越す個体、2年目の春に1kgを越す個体が見られ、ヒラメ並みの成長をするものが再捕されたのに対し、小田和湾放流群では500g以上の個体が再捕されたのは翌年の冬であり、その時期は八景島群に比べて約半年遅かった。また、1kg以上の個体は再捕されなかった。4 既往の観測データから、小田和湾周辺では夏季に25℃以上の水温が続き、これがストレスとなって放流後の種苗の減耗と成長停滞を招いたものと考えられた。5 八景島群の場合、再捕は翌年の夏に集中したのに対し、小田和湾群は2年目の春以降散発的に再捕された。また、八景島湾群は秋以降は東京湾湾口部にまで分散して再捕されたのに対し、小田和湾群の場合はそのほとんどが同湾内の放流地点直近から再捕された。6 今回の結果と過去の1994年及び1995年放流群の追跡結果と合わせて考慮すると、成長の遅い「ヒネ」と呼ばれるような種苗の方が、放流地点に2年目の春まで留まるため、成長の早い「トビ」よりも高い放流効果を達成する可能性があると考えられた。