著者
臼井 一茂 伏黒 哲司 船山 隆文
出版者
神奈川県水産技術センター
雑誌
神奈川県水産技術センター研究報告 (ISSN:18808905)
巻号頁・発行日
no.6, pp.55-61, 2013-03

平塚市及び平塚市漁協業同組合では、地元で水揚げされる鮮魚や活魚に対して、高品質化によるブランド化を推進している。また、地域型の水産加工品と共に、地元で収穫される農産物と組合わせた加工品についても、同市の特産品として開発を推奨している。平塚には平塚漁港があり、定置網や刺し網、しらす船曳網漁業のほか、カツオKatsuwonus pelamisやシイラCoryphaena hippurus、マアジTrachurus japonicusなどの五目釣りをする遊漁船業も盛んである。その遊漁船では、年間を通じて漁獲されるマサバScomber japonicusやゴマサバScomber australasicusなどが、季節的な点から脂がのらない魚体が多い。また、遊漁での釣り客も、釣られたさば類を持ち帰ることは少なく、新たな利用が求められていた。活魚を高品質に取り扱う方法として、活け締めが古くより知られている。特に高級魚であるヒラメParalichthys olivaceusやマダイPagrus majorなどでは、市場や活魚業者が包丁やカギなどで延髄を刺し、活け締めとしているほか、養殖のブリSeriola quinqueradiataやカンパチSeriola dumeriliなどでは、船上での延髄刺殺による活け締めが実用化されてもいる。また、遊漁で漁獲した活魚を品質良く持ち帰るため、魚(小型魚、大型魚)やイカなどに合わせた神経抜き用の道具も市販されている。そこで、平塚の遊漁船で漁獲された活きたサバ類の利用法として、高品質な肉質を維持させる活け締めと脱血、低温輸送によるブランド化が行えるかについて検討を行ったのでここに報告する。
著者
臼井 一茂 菊池 康司
出版者
神奈川県水産技術センター
雑誌
神奈川県水産技術センター研究報告 (ISSN:18808905)
巻号頁・発行日
no.6, pp.49-53, 2013-03

神奈川県三浦市にある三崎の水産加工業では、遠洋まぐろ延縄漁業によって漁獲されるクロカジキMakaira mazaraを中心としたかじき類のほか、東南アジアの沿岸域で漁獲されるシロカジキMakaira indica、日本近海から沖合域で漁獲されるマカジキTetrapturus audaxやメカジキXiphias gladiusなど、世界中から集荷されたかじき類が加工用原料魚として用いられている。特にクロカジキやシロカジキを用いたかじきの味噌漬や粕漬は全国的にも知られ、まぐろと共に「かながわの名産100選」にも登録されている。近年ではメカジキの漬魚加工が盛んに行われているが、マカジキやメカジキについては加熱調理用として切り身などの冷凍魚肉としての商品が多い。加工原料となるかじき類であるが、遠洋まぐろ延縄漁船では、漁獲後直ちにエラや内臓などが除去され、冷凍設備で速やかに冷凍されることから、極めて高鮮度で水揚げされる。しかしながら、東南アジアの沿岸から沖合域で漁獲されるかじき類は、数日間の操業中は船上でわずかに冷却されるのみであり、漁獲したのち数日が経過してから水揚げされ、陸上での冷凍施設により凍結処理される。それにより鮮度低下したものと考えられる魚体も見られ、加工の現場では白濁した魚肉やアオタンといわれる青色に変色した魚肉が見られ、使用できない原料となっている。さらには、日本沿岸から沖合域で漁獲されているかじき類についても、冷凍に関しては陸上施設で行うことが多いことから、加工業者が取り扱う魚肉の品質のバラツキや鮮度低下が懸念される。このため、水産技術センターでは、三崎水産加工業協同組合からの委託事業で、漬魚や冷凍品のまぐろ類やかじき類加工品で、ある冷凍切身素材について衛生検査を行っている。そこで、冷凍切身で販売されるマカジキおよびメカジキについて、2002年度より品質評価の一つとしてK値測定を行い、三崎の加工業が扱う両種の品質について検討した。
著者
臼井 一茂 加藤 健太 田村 怜子 原 日出夫
出版者
神奈川県水産技術センター
雑誌
神奈川県水産技術センター研究報告 (ISSN:18808905)
巻号頁・発行日
no.10, pp.43-49, 2019-12

本報では異なる餌料による短期養殖によって、生殖巣のGIと、特に遊離アミノ酸で甘味のグリシン、アラニン、旨味のグルタミン酸、そして苦みのバリンの含有量変化について検討した。今回のキャベツウニと比較している市販ウニは、その地域や種類全体を表すものではないが、キャベツウニは市販されていた天然ムラサキウニや天然キタムラサキウニと比べ、味わいで劣ることはないものと思われた。試食では飲食店関係者より、十分に使える味であるとの評価をしてもらったことから、実用化に向けた取り組みを民間事業者や県内の漁協とで進めたいと考えている。今回、ムラサキウニの採取場所によっては生殖巣が極めて少ないことと、さらに生殖巣の色彩がチョコレート色から墨色のような褐色であるものも多かった。それらは最後まで身入りが悪く、さらに苦みが強いことなど新たな課題も見いだされた。全国的な磯焼けの発生は、ウニ類の異常ともいえる増殖に伴う海藻類への食圧の増大が一因となっている。磯焼けした漁場ではウニ類の餌となる海藻類が減少していることから身入りが少なく、漁獲対象になっていない状況が、更なるウニ類の増加につながっている。ウニ類の除去を促進させるためにも、今後も未利用の陸上農産物を使った効率的なウニ類の身入り方法等、養殖技術の確立が必要であると思われる。
著者
臼井 一茂 石川 賢一 関野 俊之 飯田 頌太 清田 雄司
出版者
神奈川県水産技術センター
雑誌
神奈川県水産技術センター研究報告 (ISSN:18808905)
巻号頁・発行日
no.7, pp.73-80, 2014-11

平塚市は、江戸時代には東海道の宿場町として栄えた。1887年には官設の鉄道開通により平塚駅を中心に発展し、1932年には県下で四番目の市になり、自動車関係や化学関係の工場が立地する商工業都市として発展してきた。近年では、規模の大きいショッピングセンターが駅前及び郊外にも多く建設されており、産業地域とともに居住地域としても発展している。農水産業も盛んであり、きゅうり、ねぎ、里芋、バラなどが県内主産地になっているほか、しらす船曳網漁業者自らが生産するシラス干しやたたみいわしなどの水産加工品が有名である。しかし、平塚市地先では2ヶ統の定置網が操業されているものの、その漁獲物を使った地域産品としては、地元水産加工業者などが製造している、小さなタチウオを用いた「白髪干し」や、アジ等の干物「須賀湊干し」しかなく、地元の水産物や農産物を活用して、全国的にも有名な「湘南七夕祭り」の土産となり得る加工品の開発が望まれていた。今回、平塚市及び平塚市漁業協同組合から依頼により行った、低利用魚のソウダカツオ類(ヒラソウダ Auxis thazardとマルソウダ Auxis rochei)を用いた常温保存が可能な製品開発について、その結果を報告する。
著者
山田 佳昭 松下 訓
出版者
神奈川県水産技術センター
雑誌
神奈川県水産技術センター研究報告 (ISSN:18808905)
巻号頁・発行日
no.1, pp.43-49, 2006-03
被引用文献数
3

1 相模湾へ流入する河川からの汚濁物質負荷量を河川等の水質データから推定した。2 各河川からの流入負担量は、窒素27.9トン/日、リン1.9トン/日、COD30.9トン/日であった。3 各河川からの流入負荷量に占める相模川と境川の割合が高い。4 負荷量の変動には流域の降水量が影響している。5 処理場放流水による負荷量も多く、その量は年々増加している。
著者
勝呂 尚之 鈴木 正貴 水谷 正一
出版者
神奈川県水産技術センター
雑誌
神奈川県水産技術センター研究報告 (ISSN:18808905)
巻号頁・発行日
no.3, pp.87-95, 2008-03

ホトケドジョウに適した魚道を検討するため、カスケードM型と千鳥X型を用いて試験を行った。魚道の幅を30cm、傾斜を10°、流量を250と500ml/sとして、2時間おきに遡上数を計数した。結果は当歳魚および1歳魚ともに、千鳥X型がカスケードM型より遡上率が高かった。また、幅30cmの魚道では、流量が多い方が遡上を促進した。カスケードM型で魚道の幅を30cmから15cmに狭め、125、250、500ml/sの3通りの流量で試験を行ったところ、250ml/sの遡上率が改善された。本種の体高に対して、90%以上の水深を確保できれば、カスケードM型でも対応できる可能性が示唆された。ホトケドジョウの遡上と時刻との関係を解明するため、千鳥X型魚道を用いて試験を行った。試験開始時間を12時、18時、0時、6時の4通りに設定し、それぞれ6時間、魚を遡上させた。当歳魚は昼間と夜間の遡上数に差はなかったが、1歳魚は夜間に多く遡上した。また、各時間帯ともに、試験開始直後の2時間に多くの遡上がみられた。
著者
一色 竜也 片山 知史
出版者
神奈川県水産技術センター
雑誌
神奈川県水産技術センター研究報告 (ISSN:18808905)
巻号頁・発行日
no.2, pp.43-49, 2007-03

・ヒラメ種苗の胃のpHは胃内容物の有る場合は平均5.5(5.1-6.2)、無い場合は6.3(6.0-6.5)であった。・腸管は胃内容物の有る無しで差は認められず、そのpHは平均6.3(6.0-6.5)であった。・3種類の濃度(2mg/ml、10mg/ml、20mg/ml)ともALCを内包したマイクロカプセルの作成が可能であった。・MALC餌料区及びDALC餌料区において、耳石上に標識として十分に判別可能な個体が得られた。・MALC餌料区はDALC餌料区に比べ標識率(標識として判別できる個体の割合)が少なかった。・ALC溶液は作成後、10日間は標識力を保持していた。
著者
中村 良成 山田 敦 照井 方舟
出版者
神奈川県水産技術センター
雑誌
神奈川県水産技術センター研究報告 (ISSN:18808905)
巻号頁・発行日
no.1, pp.21-33, 2006-03

1 ホシガレイにおいて50mm前後の小型種苗の放流の有効性を検討すべく、日本栽培漁業協会宮古事業場(現:独立行政法人水産総合研究センター宮古栽培漁業センター)で生産された20mmサイズの種苗を約1ケ月間の中間育成の後、1998年5月19日に47mmサイズ6,500尾を東京湾(横浜市金沢区八景島地先の金沢湾の水深8~9mの砂泥底)に、1998年6月2日に49mmサイズ5,300尾を相模湾(横須賀市長井地先の小田和湾の水深約6mの砂~砂泥底)に放流した。2 再捕魚がほぼ出尽くすと考えられる2001年3月末までの放流後の詳細な市場調査および聴取調査により、八景島群は直接確認104尾、間接確認74尾、合計178尾(再捕率2.7%)、小田和湾群は直接確認37尾、間接確認4尾、合計41尾(再捕率0.8%)の再捕を確認した。3 八景島放流群では、放流翌年の夏に体重500gを越す個体、2年目の春に1kgを越す個体が見られ、ヒラメ並みの成長をするものが再捕されたのに対し、小田和湾放流群では500g以上の個体が再捕されたのは翌年の冬であり、その時期は八景島群に比べて約半年遅かった。また、1kg以上の個体は再捕されなかった。4 既往の観測データから、小田和湾周辺では夏季に25℃以上の水温が続き、これがストレスとなって放流後の種苗の減耗と成長停滞を招いたものと考えられた。5 八景島群の場合、再捕は翌年の夏に集中したのに対し、小田和湾群は2年目の春以降散発的に再捕された。また、八景島湾群は秋以降は東京湾湾口部にまで分散して再捕されたのに対し、小田和湾群の場合はそのほとんどが同湾内の放流地点直近から再捕された。6 今回の結果と過去の1994年及び1995年放流群の追跡結果と合わせて考慮すると、成長の遅い「ヒネ」と呼ばれるような種苗の方が、放流地点に2年目の春まで留まるため、成長の早い「トビ」よりも高い放流効果を達成する可能性があると考えられた。