著者
照屋 勝治
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.12, pp.3244-3252, 2013-12-10 (Released:2014-12-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1

HIV(human immunodeficiency virus)感染症は単なる「細胞性免疫不全を来す疾患」ではなく,慢性ウイルス血症による「全身性炎症性疾患」であり,それに伴い虚血性心疾患のリスク増加を含む,多様な病原性を示すことが明らかになってきている.治療開始時期は次第に早期化へ向かっており,米国では2011年にHIV感染者全員を治療の適応とする推奨がなされた.二次感染者を減少させるという予防戦略としての“treatment as prevention”という概念や,非HIV感染者に曝露前予防として抗HIV薬を用いることにより二次感染を予防しようとする試み(PrEP)も始まっている.かつては致死的疾患であったHIV感染症は,治療薬の進歩により患者の生命予後は著明に改善した.しかしながら,長期服薬に関連する既知および未知の副作用の懸念や,薬剤耐性ウイルスの蔓延リスクなどの懸念もあり,決して予断を許す状況ではない.一方,予後の改善に伴う患者の高年齢化により,これまでにはなかったさまざまな問題に対する対策の必要性も出てきている.
著者
照屋 勝治
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.153-158, 2004-03-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
8

今後, SARSは不可避な院内感染として国内発生する可能性が考えられ, 現場の医療従事者がSARSの可能性をいち早く認識し, 適切な感染対策を開始することが重要である. 医療従事者はSARSの犠牲者となるリスクがもっとも高く, かつSARS制圧においてももっとも重要な役割を果たす. SARS対策でもっとも重要なのは院内感染対策なのであり, すべての医療従事者は, 良くも悪くもSARS制圧の最前線にいるのだということを忘れてはならない. 飛沫感染が主要な感染経路であると考えられており, 感染力はそれほど強くないと考えられている. 正確なトリアージを含む, 適切な感染防御対策により2次感染をおこすことなく診療が可能であることを示すエビデンスが集まりつつあり, 各施設が十分な対策を行って慎重かっ冷静に対応することが望まれる.